週刊石油展望

　先週末のWTI原油は前週比1.94ドル安の55.99ドル、ブレント原油は1.93ドル安の59.66ドルとなった。

　先週の原油相場も先週に引き続き供給過剰への懸念や地政学リスクを巡り、方向感を欠く展開となった。前週末は欧米時間では供給過剰への懸念やウクライナ和平合意への期待が上値を抑えた一方で、米国の対ベネズエラ制裁を巡る緊張感により下値が支えられ、東京時間では小反発となった。先週の始めはウクライナとロシアの和平合意の可能性が高まったことや中国の鉱工業生産が前月と比べて減速したことが圧迫要因となり、上値重い推移となった。この時点では米国の対ベネズエラの制裁については意識されているが、市場の反応は限定的であった。16日においても引き続きロシア・ウクライナ戦争終結に向けて米国がウクライナに安全保障を提供すると表明したことが相場を圧迫した。しかしその後、トランプ米大統領がベネズエラのタンカーが出入りする港を封鎖するよう命じたことにより、高値に大きく切り返した。週の真ん中では米国とベネズエラの対立が激化し、それにより下値を支える展開となった。週末はロシアがウクライナとの戦争終結に向けて動かない場合、米国はロシアのエネルギー部門に対して追加制裁を科す準備があると伝わり、堅調な推移となった。さらに、米CPIが軟調な内容となったことも支えとなった。


出所：みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

　今週の原油市場は、需給面では先週と比べて安定感がみられるが、地政学的リスクにより、依然として方向感をつかみにくい展開が続くとみられる。共同石油統計イニシアチブ(JODI)によると10月のサウジアラビアからの原油輸出量が日量約710万バレル、生産量が日量約1,000万バレルとなり、それぞれ約2年半ぶりの高水準となった。引き続きEIA週間在庫統計の動向を注視し、判断する必要がある。また、ロシアとウクライナの和平案が進んでいくことで供給障害への懸念が薄れることにもつながるが、その動向及び米国の対ベネズエラ制裁が今後どのように動くかという部分も判断する材料にしたい。