[Vol.2253] 光と影は共存、世界の構造変化に留意

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の鎮静化期待などで。71.95ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,116.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年09月限は16,905元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年08月限は466.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2485.1ドル(前日比25.60ドル縮小)、円建てで13,692円(前日比42円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月10日 19時26分時点 6番限)
21,872円/g
白金 8,180円/g
ゴム 419.6円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「光と影は共存、世界の構造変化に留意」
前回は、「非伝統的有事が金(ゴールド)上昇の核心」と題して、ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージについて、述べました。

今回は、「光と影は共存、世界の構造変化に留意」と題して、金(ゴールド)価格と自由民主主義指数の推移について、述べます。

以下の図は、1990年以降の金(ゴールド)価格と世界の自由民主主義指数(人口加重平均)の推移を重ねたものです。両者の相関係数はマイナス0.72となっており、自由民主主義指数の低下と、金(ゴールド)価格の上昇が、同時進行する傾向が確認できます。

もちろん、前回触れたとおり、短中期では、伝統的な有事の影響を受けた資金の逃避先需要、代替資産(株の代わり)、代替通貨(ドルの代わり)としての役割が、価格を動かすテーマになります。

しかし、1990年代から30年以上にわたる長期的な視点で見ると、民主主義の後退や世界の分断が進む局面で、金(ゴールド)の存在感が高まってきたことは注目に値します。

その背景には、世界経済を取り巻く環境の変化があります。民主主義が広がり、自由貿易が進展した時代には、経済合理性が重視され、企業や投資家は効率性を追求することができました。

しかし近年は、経済安全保障や資源の武器利用、経済制裁、サプライチェーンの再編など、政治と経済を切り離して考えることが難しくなっています。こうした状況では、特定の国や通貨に依存しない中立的な資産として、金(ゴールド)の価値が改めて見直されていると考えられます。

このことは、中央銀行が2010年から金(ゴールド)を買い越していること、そして前回述べた中央銀行と非伝統的な有事が「土台」となり、金(ゴールド)相場を長期上昇に導いていることと符合します。

S&P500種指数とニューヨーク金(ゴールド)先物価格の長期推移を確認します。1980年代から2000年代にかけては、株式と金(ゴールド)は逆方向に動く傾向が強く、相関係数はマイナス0.60でした。

しかし2010年以降は状況が変わり、相関係数はプラス0.82へと大きく転換しています。株式市場が上昇する局面でも、金(ゴールド)が同時に上昇する場面が目立つようになりました。これは、金(ゴールド)が単なる「有事の資産」ではなく、世界構造の変化を反映する長期資産へと位置付けが変わったことを明確に示していると考えられます。

この数回で、2026年サッカーワールドカップを切り口として、開催国、参加国、スポンサー企業、そして世界の民主主義の変化を確認してきました。

ワールドカップは世界中の人々を熱狂させるスポーツイベントですが、その参加国やスポンサーの構成を詳しく見ると、現在の国際社会の姿が色濃く映し出されています。価値観や政治体制、経済圏が多様化し、世界が新たな均衡を模索していることが分かります。

このような変化は、一時的な出来事ではなく、今後も続く長期的な潮流である可能性があります。その中で、金(ゴールド)は短期的には有事や金融政策の影響を受けながらも、長期的には中央銀行による保有拡大や通貨への信認低下、そして世界の分断深化といった構造変化(土台)に支えられる展開が予想されます。

2026年ワールドカップは、世界の多様性と変化を象徴する大会です。そして、その大会が映し出す世界の姿は、金(ゴールド)の長期的な投資環境を考える上でも、多くの示唆を与えてくれると、筆者は考えています。

図:金(ゴールド)価格と自由民主主義指数の推移
図:金(ゴールド)価格と自由民主主義指数の推移
出所:世界銀行およびV-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。