米シェール生産動向、“質”が回復、“数”が減少

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。40.78ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,806.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は10,535元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年09月限は301.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで968.95ドル(前日比1.65ドル縮小)、円建てで3,414円(前日比6円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(7月16日 18時56分頃 先限)
 6,221円/g 白金 2,807円/g 原油 28,800円/kl
ゴム 155.0円/kg とうもろこし 22,780円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米シェール生産動向、“質”が回復、“数”が減少」

今回は「米シェール生産動向、“質”が回復、“数”が減少」として、前回に関連し、米シェール主要地区の原油生産動向に関わる指標について、書きます。

米国の原油生産量のうち、シェール主要地区の原油生産量は、およそ70%とみられます。(筆者推計)

おおむね、シェールの増減は、米国全体の増減、と言えます。

その意味では、前回述べた米国の原油生産量が年末まで回復しない、という見通しは、シェールが回復しないことが見通されている、と言えます。

そのシェールですが、以下のグラフのとおり、シェールの開発・生産段階における重要な指標である、新規1油井あたりの原油生産量が増加、稼働リグ数が減少、しています。

新規1油井あたりの原油生産量は、1油井からどれだけの原油が生産されているか、つまり生産効率を示す、言い換えれば、シェール生産の“質”を示す指標と言えます。

また、稼働リグ数は、数カ月後以降に、油井として生産が始まる可能性がある、抗井の数に直接的に関わる数字、つまり、シェール生産の“数”を示す指標と言えます。

全体的には、米シェール生産を取り巻く環境としては、“質”は回復しつつあるものの、“数”が減少しているわけです。

原油生産量が回復するためには、質と数、両方が回復することが望まれます。

その意味では、まだ現在の米シェールを取り巻く環境は、不十分と言えます。

3月の原油相場の急落で負ったダメージの影響がまだ続いていることや、原油相場が米シェールの生産のために最低限必要な価格帯に達することが想定されていないことなどが、要因と考えられます。

また、原油価格の変動もさることながら、米国内の石油の消費が想定よりも回復しない懸念があり、過剰在庫を抱えることを防ぐ意味で、生産拡大に踏みきれず、稼働リグ数が増加していない、可能性もあります。

引き続き、米シェール主要地区の質と数に関わる指標に、注目したいと思います。

図:米シェール主要地区の、新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数
米シェール主要地区の、新規1油井あたりの原油生産量と稼働リグ数

出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。