米国の原油生産量は、年末まで回復せず

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。40.67ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,812.05ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,640元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年08月限は294.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで967.7ドル(前日比8.9ドル縮小)、円建てで3,401円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(7月15日 19時11分頃 先限)
 6,222円/g 白金 2,821円/g 原油 28,710円/kl
ゴム 156.5円/kg とうもろこし 22,900円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米国の原油生産量は、年末まで回復せず」

前回は「減産規模縮小は予定通り」として、OPECプラスの減産に関わる、諸会合について報じられている“減産の規模縮小”について、書きました。

今回は「米国の原油生産量は、年末まで回復せず」として、今月、EIA(米エネルギー省)が公表した月次短期見通しより、米国の原油生産量について、書きます。

以下のグラフのとおり、EIAのデータによれば、米国の原油生産量は、今年3月から6月にかけて急減しました。3月の原油相場の急落が一因と見られます。

3月の急落とは、新型コロナショックで下落傾向にあった中、OPECプラスの会合が決裂し、下落に拍車がかかり、WTI原油価格が40ドル台が20ドル台まで下落した値動きです。

この値動きにより、比較的生産コストが高いとされるシェール主要地区を中心に、米国の原油生産量が減少しました。

3月は日量1273万バレルでしたが、6月は日量1098万バレルでした。日量175万バレル、およそ13.7%の減少です。

原油相場が急落したことが、米国の原油生産量が減少したことの主な要因とみられますが、4月20日にマイナス価格を付けた以降は、原油相場は大きく反発しました。

しかし、EIAは、7月以降については、増加も減少もせず、横ばい、との見通しを示しています。原油相場は回復したものの、原油生産量の回復は見込まれていません。

3月の原油相場の急落で負ったダメージの影響がまだ続いていることや、原油相場が米シェールの生産のために最低限必要な価格帯(40ドルから45ドルと筆者は推定しています)に達することが想定されていないことなどが、要因と考えられます。

また、新型コロナの影響で、米国国内の消費の回復が鈍くなる懸念も、過剰在庫を抱えないための予防策という意味で、生産減少要因に挙げられると、考えられます。

図:米国の原油生産量(EIAの見通しを含む) 単位:百万バレル/日量
米国の原油生産量(EIAの見通しを含む)

出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。