米シェール、生産回復はまだ遠い!?

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。40.44ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,812.15ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。20年09月限は10,505元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。20年09月限は293.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで955.65ドル(前日比4.75ドル縮小)、円建てで3,381円(前日比1円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(7月20日 19時1分頃 先限)
 6,243円/g 白金 2,862円/g 原油 28,670円/kl
ゴム 155.3円/kg とうもろこし 22,990円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「米シェール、生産回復はまだ遠い!?」

今回は「米シェール、短期的な生産減少見通しの根拠」として、毎月、EIA(米エネルギー省)が公表している、米シェ―ル主要地区の各種データをもとに、筆者が推定した、同地区の新規油田からの原油生産量について書きます。

EIAが毎月公表している、米シェール主要地区に関するデータに、仕上げ済井戸数と、新規1油井あたりの原油生産量、というデータがあります。

仕上げ済井戸数とは、掘削が終わった井戸に対し、原油生産を開始するための最終的な作業が終わった井戸の数のことです。

具体的には、高圧で水と砂と少量の化学物質を井戸に注入する作業です。

この作業は、探索・開発・生産のシェール生産までの工程のうち、開発の後半部分にあたりますが、一連の作業の中で最もコストがかかる作業と言われています。

逆を言えば、この工程を踏む、ということは、かけたコストを回収するため、原油の生産を行うことが前提になっている、と考えられます。

この仕上げ済井戸数に、新規1油井あたりの原油生産量を乗じると、シェール主要地区の新規油井からの原油生産量の推計値を導くことができると、筆者は考えました。

以下が、同地区の新規油井からの原油生産量の推計値です。

2020年3月を機に、急減していることがわかります。同月時点で日量88万バレルだったのが、6月時点で日量22万バレルまで減少しました。

過去の推移から見て、原油相場の動きと連動する傾向があるものの、原油相場は4月を底に反発しましたが、同地区の新規油井からの原油生産量の推定値は、まだ増加していません。

数カ月間の時間差があるとみられますが、来月公表の7月の推定値も回復を示さない場合、米シェール生産の早期回復が難しいことが示されることになると、考えられます。

図:米シェール主要地区の新規油井からの原油生産量(筆者推定)とWTI原油価格の推移


出所:EIAのデータより筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。