金価格は一時的な天井かもしれない

著者:近藤 雅世
 金について書く機会が増えているが、その都度いろいろ調べていくと、どうも現在の金価格は上がり過ぎだと思えてしかたがない。昨年初めから7月17日までに、東京金は+38%、NY金は+41%上昇している。その間に日経平均株価は+16%、ダウ平均株価は、+12%の上昇である。昨年初めを100とした指数グラフを見ると、株価の値下がりに対して金価格が上昇していることが見て取れる。
 
東京金価格と日経225株価

NY金価格とダウ平均株価

 この値上がりの間に金を買った人々は、主に金融投資家だったと思われる。つまり株価の下落に対して、金を買った人が多い。それは今年6月までの金ETFの買い残が増加していることでわかる。主に米国と欧州の金融投資家が証券会社を通じて金を買った。しかし、いわゆる常時金を売買しているファンドは出動していない。むしろ金価格とファンドの建玉は逆相関している。ファンドのネット買い残と金価格は、2019年は0.96という高い正の相関関係にあった。つまりファンドが買うと金価格が上がり、ファンドが売れば金価格が下がると言う構図となっていた。それが今年の相関係数は▲0.54と負の相関になっている。

 つまりファンドが売っても金価格は上がると言う状況となっている。
 
NY金のファンドのネット買い残と価格の相関係数年次変化

 一方で、第一四半期以降の世界の金の需要を見ると、宝飾品や金地金・コインの需要は減少している。ことに世界最大の金消費国である中国とインドの金の需要が大幅に落ち込んでいる。金市場の常連客である彼らは、高い価格の金には手出しをしない。

 それにもかかわらず金を買う人が多く、価格が上昇しているということは、金の需要はそれ程底堅いものではないと言うことである。もし景気が回復したり、他に良い投資先が見つかれば一見(いちげん)の客は他の店に流れてしまう。過去の金の需要と価格の関係を調べると、宝飾品等の金の需要が減少すると、価格は下がることになっていた。第2四半期の金需要はこれからWorld Gold Councilにより公表されるが、第1四半期同様金需要は落ち込んでいるものと思われ、よりどころを失った金は下落すると思われる。

 金はもともとリスクヘッジのための安全資産であった。リスクが生じた場合の保険である金投資は、今回は新型コロナという未知の危険に人類が遭遇して思いもよらない経済不況を現出させた。まさか街のネオンが消えるような状況を一体だれが今年初めに想像できたであろうか。

 日頃から金を保険つなぎとして買い貯めていた人は、これから売り抜けるだろう。他の資産の減価を金の利益で補うためである。ノミナル(名目的)な利益では損失を補うことはできないので、どこかで高値と判断すれば、金のETFを買っていた人は売り抜けるものと思われる。

 そこに新たな投資家が入るかどうかは、今後の新型コロナの見通し次第である。つまり、第二派が深刻な影響を世界経済に及ぼし、再びロックダウンになるようなことがあれば、新手の金への投資資金が集まるだろう。しかし、そうでなければ、そっとプロフィットテイクをする人々を見て、金を保険として買っていた人々は我先に争って売るだろう。

 今はそうした微妙な段階にあるのではないかと推察している。

 保険としての金投資は、価格が上がる前から行っているべきであり、事件が起きてから保険に加入することはできない。

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
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