金・銀週間展望=堅調、欧米の利下げ期待が支援

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
             [3月11日からの1週間の展望]
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   週間高低(カッコ内は日)   2025 年  2 月限  3 月 4 日〜 3 月 8 日
        始 値   高 値    安 値    帳入値   前週末比
  金           9,898    10,341 ( 6)    9,875 ( 4)     10,264         +369
  銀           110.7     119.0 ( 5)    110.7 ( 4)      117.0         +6.3
 プラチナ       4,289     4,376 ( 8)    4,251 ( 4)      4,356          +68
 パラジウム     4,600     4,900 ( 8)    4,600 ( 4)      4,900         +400
======================================
  NY貴金属(カッコ内は限月)      | 東京外為・株式/NY原油
         7  日終値  前週末比  |        終 値      前週末比
  金       ( 4) 2,165.2     +69.5   | ドル・円    147.93      2.47 円高
  銀       ( 5) 2,457.8    +121.4   | 日経平均  39,688.94       -221.88
 プラチナ   ( 4)   923.4     +35.4   | NY原油 ( 4)  78.93         -1.04
 パラジウム ( 6) 1,042.40    +79.90  |* ドル・円は15時15分現在、原油は  7日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【前回のレビュー】
 金は米連邦準備理事会(FRB)の6月の利下げ開始見通しで堅調、とした。
 金はパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げ見通しを示したことや欧州中
央銀行(ECB)がインフレ見通しを引き下げたことを受けて堅調となった。現物相場
は史上最高値2163.41ドルを付けた。金先限は上場来高値1万0341円を付け
た。
 パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は6日、下院金融サービス委員会の公聴会
で、利下げ開始時期とそのペースは経済データのみに基づいて決定されると述べた。ま
た7日の上院銀行委員会の公聴会で行った証言で、米FRBが利下げに着手するために
必要なインフレ低下に対する確信は「そう遠くない」将来に得られるとの考えを示し
た。一方、2月の米ISM製造業景気指数は47.8となり、1月の49.1から低下
した。節目となる50割れは16カ月連続となった。事前予想の49.5を予想外に下
回った。米ISM非製造業総合指数も52.6と前月の53.4から低下し、事前予想
の53.0も下回った。2月の全米雇用報告で、民間部門雇用者数は14万人増と、事
前予想の15万人増を下回った。転職しなかった労働者の賃金は前年比5.1%上昇と
1月の5.3%上昇から伸びが鈍化し、2021年8月以降で最小となった。2月の米
雇用統計を確認したい。CMEのフェドウォッチで、米連邦公開市場委員会(FOM
C)の利下げ開始確率は6月が56.4%(前週52.8%)となった。ただ年末のフ
ェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準は4.25〜4.50%の確率が
35.8%(同28.4%)となり、利下げ幅は100ベーシスポイント(bp)とな
った。利下げ期待が行き過ぎている可能性がある。米ミネアポリス地区連銀のカシュカ
リ総裁は、昨年12月時点で2024年は25bpの利下げ2回が適切になる可能性が
高いと考えていたとし、その後の経済指標の強さを考慮すると、現在はさらに多くの利
下げを予想するのは考えにくく、それより1回少ない可能性もあると述べた。
 欧州中央銀行(ECB)は7日、政策金利を予想通り据え置いた。金利を引き下げる
準備はまだできていないとしながらも、インフレ見通しを下方修正して想定よりも早い
鈍化を確認し、年内の利下げ着手に向け慎重な地ならしを行った。2024年のインフ
レ率は12月時点の2.7%から2.3%に引き下げ。2025年の予想も同2.1%
から2.0%に引き下げた。ただラガルドECB総裁は、「(インフレ率の)明確な低
下が進行中であり、インフレ目標に向けて順調に前進している。その結果、われわれは
より自信を深めているが、十分ではない」と述べた。2月のユーロ圏の消費者物価指数
(HICP)速報値は前年比2.6%上昇と前月の2.8%上昇から伸びが鈍化した
が、事前予想の2.5%上昇をわずかに上回った。コアインフレ率は3.1%上昇。前
月の3.3%上昇から伸びが鈍化したが、事前予想の2.9%上昇を上回った。
【金ETF残高は減少】
 世界12カ国に上場している金ETF(上場投信)の現物保有高は7日時点で
1010.94トンとなり、前週末比7.36トン減少した。米国で7.20トン、英
ETFSで0.16トン減少した。米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待が高まっ
たが、投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告
によると、2月27日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは14万1636
枚となり、前週の14万0262枚から拡大した。今回は新規買いが3914枚、新規
売りが2540枚出て1374枚買い越し幅を拡大した。
 イスラム組織ハマスはパレスチナ自治区ガザの停戦交渉の提案の草案を受け取った
が、恒久的な戦争終結とガザからのイスラエル軍の完全撤退にしか関心はないとして、
提案を拒否した。ハマスの代表団は7日、交渉が行われているカイロを離れたが、指導
部との協議が目的で、交渉は継続すると説明した。10日に始まるイスラム教のラマダ
ン(断食月)を前にした戦闘休止の合意は難しくなっている。ハマスはイスラエルとヨ
ルダン川西岸地域のイスラム教徒に対し、ラマダンの初日にエルサレムにあるイスラム
教の聖地「アルアクサ・モスク」に向かう行進を呼び掛けている。一方、イスラエルの
ネタニヤフ首相は7日、国際的な圧力が高まる中でもイスラエルはハマスに対する攻撃
を続行すると表明し、これにはパレスチナ自治区ガザ南部のラファも含まれると述べ
た。
【銀は欧米の利下げ期待や金堅調が支援】
 銀の現物相場は、欧米の利下げ期待や金堅調を受けて買い優勢となり、昨年12月以
来の高値24.49ドルを付けた。2月の米ISM製造業景気指数が予想外に低下した
ことやパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利下げ見通しを示したことを受けて
6月の利下げ開始の見方が強い。また欧州中央銀行(ECB)がインフレ見通しを下方
修正した。さらに中国の株安対策も続いており、リスク選好の動きとなっている。
 7日のニーヨークの銀ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比191.72トン
減の1万3213.33トンとなった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建
玉明細報告によると、2月27日時点のニューヨーク銀の大口投機家の買い越しは1万
4499枚となり、前週の2万2377枚から縮小した。手じまい売り、新規売りが出
た。
当面の予定(イベント・経済統計)
11日 国内総生産 2023年10-12月期2次速報 (内閣府)
12日 企業物価指数 2024年2月(日本銀行)
    独消費者物価指数 2024年2月確報(連邦統計庁)
    英雇用統計 2024年2月(国立統計局)
    米消費者物価指数 2024年2月(労働省)
    米財政収支 2024年2月(財務省)
13日 英貿易収支 2024年1月(国立統計局)
    英鉱工業生産指数 2024年1月(国立統計局)
    ユーロ圏鉱工業生産 2024年1月(EUROSTAT)
14日 米小売売上高 2024年2月(商務省)
    米新規失業保険申請件数(労働省)
    米生産者物価指数 2024年2月(労働省)
    米企業在庫 2024年1月(商務省)
15日 中国住宅価格指数 2024年2月(国家統計局)
    米輸出入物価指数 2024年2月(労働省)
    米製造業景況指数 2024年3月(ニューヨーク連銀)
    米鉱工業生産・設備稼働率 2024年2月(FRB)
    米消費者信頼感指数 2024年3月速報値(ミシガン大)
    建玉明細報告(CFTC)
MINKABU PRESS 東海林勇行
※投資や売買については御自身の判断でお願いします。

このニュースの著者

MINKABU PRESS

みんなの株式をはじめ、株探、みんかぶFX、みんなの仮想通貨など金融系メディアの 記事の執筆を行う編集部です。 投資に役立つニュースやコラム、投資初心者向けコン テンツなど幅広く提供しています。