NY金の指標限月の期近12月限は7月以降、2400〜2500ドルのレンジ内で の高下が続いている。9月に米利下げ着手観測に支援され、8月14日に2519.7 ドルまで値を伸ばしたが、その後は値位置を落とし2500ドルを割り込んで取引を終 えている。 米国では雇用情勢が緩和傾向を見せていることで賃金上昇率が伸び悩み、サービス部 門の成長率が低下することでディスインフレ傾向が高まることが見込まれ、9月公開市 場委員会(FOMC)での大幅利下げをもたらす要因になるとの見方が強まった。 その一方で、雇用情勢が軟化しているなかで利下げに着手することは米経済にネガテ ィブな影響を与えるとしてリスクを回避する動きも見られ、これが2400ドル近辺ま でNY金価格が値を落とす主因となった。 既に米連邦準備理事会(FRB)による9月利下げ着手が織り込まれるなか、市場の 関心は9月の利下げ幅がどの程度になるかに移っており、0.50%の大幅利下げを見 込む声も上がっている。 14日に発表された7月の米消費者物価指数(CPI)は、9月の利下げ幅の参考に なる指標として注目されていたが、総合CPIの前年同月比は+2.9%で3%を割り 込んだ。一方の前月比は+0.2%だった。事前予想に一致する内容であるため、イン フレの鈍化傾向を示しながらも大幅利下げを後押しするにはインパクトに乏しい内容と なっている。 また、家賃を示すシェルター部門が5.1%と高止まりしていることも注目される。 米国では高金利環境は需給の引き締まりにより新規、中古共に住宅販売件数が伸び悩ん でいる。 一戸建て不足や高い住宅ローン金利が需要を支えるなかシェルター部門が高止まりし ていることは、全体的にはインフレ緩和傾向が継続しているとはいえ、その緩和ペース は鈍い状態が続く可能性が高い。 CPI上昇率が想定されているほど早いペースで鈍化することがなければ、FRBも 利下げに着手したとしても利下げ幅をどの程度に設定するか慎重な対応を迫られること になる。今回、総合CPIの伸び率が3%を割り込んだことは利下げ着手に向かう可能 性を一段と高めるものだったが、大幅利下げの可能性は後退しており、これがNY金市 場の軟調な足取りを促す要因となった。 15日に7月の米小売売上高が発表される。雇用情勢が緩和傾向に向かい、賃金上昇 率が伸び悩むなか、米個人消費意欲が注目される。もし旺盛な個人消費が見られるよう であれば大幅利下げ観測を後退させる材料になりかねない。 年内の利下げ着手はすでに織り込まれているものの、安定かつ継続的な米CPIの低 下、雇用情勢の緩和、賃金上昇率の低下見通しが確認できなければ利下げ幅は限られた ものとなってきそうだ。 MINKABU PRESS
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