【来週の注目材料】米CPI&小売売上高

配信元:みんかぶFX
著者:MINKABU PRESS
 先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でのパウエル米FRB議長の追加利下げに慎重な姿勢もあり、次回6月の利下げ期待が大きく後退しました。FOMC前までは利下げと据え置きが拮抗する展開となっていたが、直近据え置き見通しが80%を超えるところまで強まっています。もっとも米景気の鈍化警戒もあり、7月のFOMCでは利下げの見通しが70%程度と大勢となっており、年内の利下げ回数も3回が大勢となるなど、追加利下げへの市場の期待は継続しています。
 先行き不透明感を強めるものとしてパウエル議長などから警戒されているトランプ政権の関税政策も、米英の貿易協議が合意となったことで、進展が期待される状況となっています。そうなると利下げに向けて気になるのが米国の経済・物価情勢。物価に関しては米物価統計の中で市場の注目度が最も高い消費者物価指数(CPI・4月)が13日に発表されます。経済動向では2日に発表された米雇用統計が強めに出ていますが、関税を受けての個人消費動向にも注目が集まっている中で、15日に米小売売上高(4月)が発表されます。

 まずはCPIです。前回3月のCPIは前年比+2.4%と2月の+2.8%から大きく鈍化。市場予想の+2.5%も下回りました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア前年比も+2.8%と2月の+3.1%から鈍化し、市場予想の+3.0%も下回りました。

 内訳をみるとエネルギー価格が-3.3%と大きく低下し全体を押し下げました。NY原油価格の低下などもあってガソリン価格が-9.8%という落ち込みを見せたことが背景にあります。ガソリン価格は前月比でも-6.3%と大きな低下を見せています。一方食品は+3.0%と2月の+2.6%から伸びが強まりました。鶏卵が+60.4%となっており全体を支えたほか、外食が3.8%と力強い伸びとなったことが食品項目を支えました。

 食品とエネルギーを除いたコア項目では、財部門で中古車や衣料などの伸び鈍化が見られたものの、全体ではまちまちとなり、2月と同じ-0.1%に留まっています。一方サービスは+3.7%と2月の+4.1%から鈍化を見せました。CPI全体を100としたとき、36.2%を占める最大の項目住居費が+4.0%と2月の+4.2%から鈍化し、全体を押し下げました。その他目立ったのが航空運賃で-5.2%の大幅な低下となりました。航空運賃は12月の+7.9%、1月の+7.1%という高い伸びから2月が-0.7%とマイナス圏となり、3月が-5.2%の大幅な低下となっています。こうした物価の鈍化について、トランプ大統領は自身のSNSで歓迎する意向を示していました。もっとも市場は航空運賃の下げは個人の旅行などの意欲低下によるものではとの警戒感を示しており、今後の状況が注目されています。

 こうした状況を受けて今回4月のCPIですが前年比+2.4%、コア前年比+2.8%と3月と全く同水準が見込まれています。住居費などは低下が続いているとみられるほか、3月弱かったエネルギー価格については、米エネルギー情報局調査での全米ガソリン価格が3月から4月にかけて上昇しているものの、比較対象である2024年の3月から4月にかけての上昇率に及んでいないため、前年比ベースではマイナス幅の拡大が見込まれるという状況になっています。一方でトランプ関税の影響を受けた消費財などの上昇警戒があり、均して前回並みという状況が見込まれています。ただ、関税の影響についてはブレがそれなりにあるとみられ、ます。予想からの乖離に要注意です。予想以上に鈍化を見せた場合、6月だけでなく7月も据え置きとの見通しが広がる可能性があります。

 続いて小売売上高です。前回3月は前月比+1.4%(その後+1.5%に修正)と2023年1月以来2年超ぶりの高い伸びを示しました。ただこの伸びはトランプ関税の発動を前にした駆け込み需要の拡大があったとみられています。内訳をみると、自動車関税の発動を前に自動車及び同部品が前月比+5.3%の大幅な伸びとなり、全体を1.0%分押し上げています。おもちゃやスポーツ用品の値上がりを意識して、スポーツ・娯楽・書籍の項目が+2.4%とこちらも高い伸びとなりました。

 今回はそうした駆け込み需要が落ち着くことで、前月比+0.1%と動きが落ち着く期待が強まっています。相互関税を意識した動きなどもあってプラス圏は辛くも維持する見込みですが、予想を下回り前月比マイナス圏に沈むと、米個人消費への警戒感が強まりそうです。

 なお、経済指標以外の材料としては、5月15日、16日に第二回トーマス・ローバッハ・リサーチカンファレンスがあります。FRBが主催し、多くのFRBエコノミスト、大学教授、中銀関係者が出席する同カンファレンス。15日午前に行われる基調講演をパウエル米FRB議長が行います。なお同カンファレンスではバーナンキ元FRB議長が出席するパネルディスカッションや、レーンECB専務理事/ロンバルデッリ英中銀副総裁/セイム・リクスバンク(スウェーデン中央銀行)副総裁の参加するパネルディスカッションなどが予定されています。金融政策などを専門とするFRBのエコノミストであった故ローバッハ氏の名を冠した同カンファレンスは、金融政策の戦略、手段、コミュニケーションなどがテーマとなっており、その基調講演ということで、パウエル議長から今後の金融政策見通しについての発言が出てくると期待されており、注目を集めています。

MINKABUPRESS 山岡

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