貴金属4品週間見通し=NY金は米物価高懸念やドル離れに支えられ底固い

配信元:MINKABU PRESS
著者:MINKABU PRESS
<NY金>
 NY金指標の6月限は今月7日にかけて浮上し4月22日に付けた3509.9ドル
に次ぐ3448.2ドルの高値を付けたが、その後は急落に転じ15日は3123.3
ドルと4月10日以来の安値を付けた。ただ、この日は日中取引に急反発となり、終値
で3226.6ドルを記録しており、目先の売り一巡とも見られる動きとなった。
 NY金は米中貿易戦争や関税引き上げが米景気に与える影響に対する警戒感から安全
資産を求める動きが広がるなか値位置を切り上げてきた。しかし10〜11日に開催さ
れた米中通商協議で90日の期限つきながら暫定的に相互的に115%関税を引き下げ
ることで合意に至ったことで不安感が後退し、その後の急落がもたらされている。
 米中双方の大幅関税引き下げ合意を受け、JPモルガン・チェースは2025年後半
に景気後退に陥るとの米景気見通しを不況なしへに変更した。またバークレーズは25
年後半の不況回避としたうえ、ゴールドマン・サックスも今後1年間の米景気後退の可
能性をこれまでの45%から35%に引き下げるなど、これまで懸念されていたスタグ
フレーション発生の可能性を見込む予測が一気に後退している。
 関税の大幅引き下げにより不確実性が後退したことが背景となっているが、一方で米
経済に与えるリスクが完全に消滅したわけではない点に注意が必要だろう。
 米国の中国からの輸入品に対する関税は、米中通商協議による大幅引き下げ合意を経
ても30%が維持されている。この関税発動以降の輸入価格の上昇は駆け込み輸入で積
み上がった在庫を消化するにつれ、米国内の物価に反映されていくと予想され、低下傾
向にある米消費者物価指数にも今後は上昇圧力がかかってくることになるだろう。
 また、金と同様に米ドルが政治的要因によって大きく高下していることや、米政権に
よる一連の政策を受けた米国への信認の低下は、各国の公的機関によるドル離れの動き
を促すと同時に、万国共通の安全資産である金を求める動きを刺激している。
 政治的な動きによって新たに大きな値動きを見せる可能性はあるが、米中通商協議で
の大幅関税引き下げ発表から1週間を経て材料織り込み感が強まるなか、金に対する安
全資産を求める根強い動きが引き続きNY金を支える要因となり、NY金6月限は
3200ドルを下値支持線にしての底意の強い動きが続くと見られる。
<銀>
 NY銀7月限はNY金の大きな高下にも反応は薄く、引き続き3200〜3300セ
ントのレンジを中心にしての往来が続いている。
 米中通商協議における大幅関税引き下げ合意は景気後退懸念を後退させる要因となっ
ていることで、NY金市場と同様にNY銀市場においても買い支援要因となっているも
のの、景気不安が完全に解消されたわけではないだけに上値は限られている。
 NY金が安全資産を求める動きに支えられると予想されるため、底意の強い値動きが
想定されるが、3300セントを大きく上抜く手掛かりには乏しく、引き続き同値圏で
の往来となるか。
<白金>
 NY白金7月限は米中通商協議を控えた8日に値位置を切り上げ、980ドルを下値
支持線とするもちあいとなっている。その一方で1000ドルを大きく超えていく動き
は見られず上値の重さも窺わせている。今年も供給不足が見込まれことが下支え要因な
がら、今後のトランプ関税次第では需給緩和観測が台頭する不安がある。
 米中通商協議による相互の関税大幅引き下げ合意は白金市場でも買い支援要因となっ
ているが、米国では自動車および自動車部品に対する輸入関税を引き上げた状態にあ
り、自動車用触媒としての白金需要の見通しには不透明感が残る。
 ドル安傾向が強まれば値位置を切り上げる展開も見込まれるが、当面は1000ドル
を上値抵抗線にしての高下が想定される。
<パラジウム>
 NYパラジウム6月限は方向性に乏しい足取りが続いている。
 米中通商協議が開催された10〜11日の前後に990ドル台まで値を伸ばす動きが
見られたものの、金に連動して12日に大きく軟化した後は950ドルを前後での高下
となった。
 NYパラジウム6月限は3月上旬以降、4月に一時的に大きく値を下げた以外、概ね
950〜990ドル台での高下が続いている。NY金やNY白金へ連動する動きも見ら
れているが、独自の手掛かりに乏しいため引き続き990ドル台を上値抵抗線にしての
もちあい継続と予想される。
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