プラチナの現物相場は7月、ドル安が一服したことに上値を抑えられ、高値圏でのも み合いとなった。ただ米政権の連邦準備理事会(FRB)に対する圧力が強まると、金 主導で上値を試し、2014年8月以来の高値1480ドルを付けた。一方、米国と各 国の関税交渉の期限を8月1日に控え、日本と合意に達すると、ドル高を受けて調整局 面を迎えた。欧州連合(EU)とも合意した。また中国との関税の停止期間は8月12 日に失効するが、ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相の貿易交渉で停止期間を 3カ月延長することで合意した。目先は各国との交渉が8月1日までにまとまるかどう かが焦点である。貿易に対する楽観的な見方が強まったことはプラチナの下支え要因で あり、押し目買いが入ると、再び上値を試す可能性が出てくる。 7月24日の欧州中央銀行(ECB)理事会で、8会合ぶりに金利据え置きが決定さ れた。欧州連合(EU)と米政権の関税交渉が続き、不確実性が根強いことが背景にあ る。ラガルドECB総裁は記者会見で、「経済成長に対するリスクは下向きに傾いてい る。主なリスクとして、世界的な貿易摩擦の一段の高まりと不確実性が挙げられる」と 述べた。欧州の指導者はグローバリズムを唱えるなか、関税ゼロを目指していたが、米 国第一主義を掲げるトランプ米大統領に対する交渉カードを持たず、不利な状況であっ た。相互関税は当初の30%から15%に引き下げられたが、6000億ドルの対米投 資を約束させられた。ただEUは米国との全面対決は失うものが多いと判断し、関税合 意に達した。今後発表される経済指標で見通しを確認したい。 【上海プラチナウィークで中国の投資や宝飾品の需要増加が指摘される】 上海プラチナウィークが7〜10日に開催された。米国の関税がプラチナの需要に与 える影響は総需要の1.4%程度にとどまるとみられている。今後数年の経済成長の鈍 化により、自動車触媒需要や産業用需要が減少するが、現時点では金価格高騰を受けた プラチナの投資用と宝飾品用の需要増加が相殺し、2029年までプラチナの供給不足 が続く見通しである。中国のプラチナ宝飾品は金宝飾品のデザインを反映しており、小 売販売が続くと、2026年以降、需要が大幅に増加する可能性があるという。また中 国の新たな排ガス規制が2026年に認可されると、1台当たりのプラチナ系貴金属 (PGM)の使用量が増加するとみられている。世界的にはポリ塩化ビニルメーカー が、2030年までに水銀ベースの触媒の使用を段階的に廃止する必要があり、プラチ ナベースの触媒への移行が進む見通しである。 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)のトレバー・レイ モンド最高経営責任者(CEO)は上海プラチナウィークでは、中国とアフリカの関係 が重視され、南アフリカからバルテラ・プラチナ(旧アングロ・アメリカン・プラチ ナ)、インプラッツ、ノーサム、タリサを含む4つの主要な鉱山会社が参加した、と述 べた。また中国のプラチナ需要は拡大を続けており、現物投資の伸びがそれを証明して いる、と指摘した。 【プラチナETFの利食い売りが目立つ】 プラチナETF(上場投信)残高は7月28日の米国で36.69トン(6月末 37.28トン)、25日の英国で10.37トン(同16.25トン)、南アで 8.77トン(同9.54トン)となった。軒並み減少し、高値圏での利食い売りが目 立つ。ただ米国と各国の関税合意で貿易に対する楽観的な見方が戻っており、強気のフ ァンダメンタルズが見直されると、投資資金が戻る可能性がある。一方、米商品先物取 引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月22日時点のニューヨーク・プラ チナの大口投機家の買い越しは2万0675枚(前週1万9302枚)となった。6月 10日時点の2万6979枚をピークとして、買い越しは縮小傾向にあり、高値での買 いが見送られた。またニューヨーク市場で目立った動きとしては17日以降、指定倉庫 在庫が急増し、実需筋の売りが出たことが挙げられる。5月半ばまで価格が低迷してい たことで高値を売りたいとの心理が働くとみられるが、プラチナの供給不足見通しに加 え、米国の関税引き上げによるインフレ懸念で高値を更新するようなら、踏み上げの動 きとなる可能性もある。 (MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行) *30日、Yahoo!ファイナンスに掲載された記事を再配信します。
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