【来週の注目材料】米PCE価格指数に注目 注目された昨日22日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長によるジャクソンホール会議での講演は、今後の利下げを示唆する内容となり、米利下げ期待が強まっています。今月1日の米雇用統計が衝撃的な弱さとなり広がった米利下げ期待は、12日の米消費者物価指数(CPI)で関税の影響が限定的となったことでさらに強まりました。しかし14日の米生産者物価指数(PPI)が予想を大きく超える伸びとなり、期待が後退。21日の米購買担当者景気指数(PMI)の強さなどもあって、期待がもう一段後退しました。短期金利市場などでの政策金利動向の織り込みをみると、米CPI後に9月の利下げ自体はほぼ確定、0.5%の大幅利下げもあるのではとの見方となった後、米PPIと米PMIを受けて、0.25%利下げの期待が優勢も、据え置き見通しが三分の一程度見られるという状況になっていました。パウエル議長講演を受けて9月の利下げ期待は95%近くまで一気に強まった後、少し落として85%程度と利下げ濃厚というところまで期待が広がっています。そうした中、利下げ実施が確実なものになるか、決定に大きな影響を与える米物価統計として、 29日発表の7月の米個人消費支出(PCE)価格指数に注目が集まります。 同じく消費者ベースの物価統計である米消費者物価指数(CPI)の方が発表が早く(今月は12日に発表済み)、水準は少し違うものの、変化傾向は似ているため、市場は米CPIの方をより注目する傾向があります。ただ、米国のインフレターゲットの対象はこちらのPCE価格指数。金融政策に与える影響という意味ではかなり重要な指標となります。 米CPIはエネルギーの鈍化もあって総合の前年比が予想を下回るも、コアは予想を超える伸びとなりました。前月比は総合、コア共に予想通りも、コアの+0.3%は1月以来の高水準と、強さも見られています。ただ、コア財の伸びは抑えられており、コアサービスの伸びが全体を支えたものとなっています。関税の直接の影響ではなく、人件費の伸びが影響する部門の伸びで、全体が強くなったということで、利下げ期待は逆に強まるという展開となりました。 その後米PPIが総合、コア共に大きく伸びて関税の影響がしっかりと出ていたことで、利下げ期待の後退につながっています。PPIのうちPCE価格指数の算出に用いられる項目は、入院費、介護ケアなどのヘルスケア関連が弱めに出たものの、航空旅客サービスとポートフォリオ管理費が急騰しており、やや強めの数字となっていました。 こうした状況を受けて今回のPCI価格指数ですが、予想は前年比が+2.6%と6月と同水準、コア前年比が+2.9%と6月の+2.8%からやや伸びる見込み、前月比は+0.2%と6月の+0.3%から伸びが鈍化、コア前月比が+0.3%と6月と同水準となっています。 CPI同様にエネルギー価格の鈍化が総合の伸びを抑える一方、人件費の伸びもあってサービスが強めに出る可能性が高いとみられます。警戒するべき点としては、上記のようにPPIのうち、PCE価格指数の算出に利用される部分の一部がかなり強かったことと、CPIの中で住居費の伸びが6月から鈍化していましたが、PCEではその影響が小さくなること。住居費はCPI全体を100としたとき36.2%を占める最大の項目。コアだけで見ると45.3%が住居費となります。今回のCPIでは前年比+3.7%と水準的には高いものの6月の3.8%から鈍化。3カ月連続での鈍化となっています。前月比は+0.2%と6月と同水準でした。PCEでも住居費は大きなファクターですが、全体に占める割合はCPIの半分程度となっています。その分、前年比の伸び鈍化が全体に与える影響が小さくなります。 予想前後であれば9月の利下げ期待に与える影響は限定的と見られますが、予想からの乖離が見られると、かなり神経質になっている状況だけに、相場への影響が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。 MINKABUPRESS 山岡
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