【安全資産を求める動きは根強く、NY金は高値圏でのもみあいに】 NY金12月限は23日に3824.6ドルに達し、9月に入り一代高値を3回目の 更新となった。24日はドル高の進行を受け、利益確定の動きとなり、3749.7ド ルまで修正安が進行した。 高値更新の一因が米利下げ観測だ。米国で16〜17日にかけて開催された公開市場 委員会(FOMC)で事前予想通りに0.25%の利下げが決定され。年内の利下げ回 数の見通しが9月を含めた3回との見方が示されたことで、今後も継続的に利下げが実 施されるとの見方が強まっている。 FOMCでの見通しに加え継続的な利下げ見通しを支える一因となっているのが米雇 用情勢の軟化だ。今月の米労働省労働統計局の年次改定では米雇用情勢は米トランプ政 権による関税引き上げ以前から軟化していた可能性が示された。また求人件数の減少や 解雇者数が増加する週が見られるなど、米雇用情勢の軟化を示唆する雇用統計の発表も 目立っている。 米雇用情勢が軟化することは購買力低下の可能性を意識させる要因となる。米国では 国内総生産(GDP)のうち約70%を個人消費が占めているため、購買力の低下は米 経済成長の鈍化を招きかねない。そのため、購買力の増強を図り個人消費を刺激するた めに引き続き金融緩和を実施する可能性がある。 ただ、その一方で注意が必要なのは、利下げは個人消費を刺激する要因になり得る一 方、消費が活発化することによる物価の高止まりを招きかねない、というリスクも抱え る点だ。物価が高止まりするようであれば金融緩和が行われたとしても、想定通りの個 人消費の伸びが見られる可能性も後退しかねない。 なお、8月1日の相互関税の上乗せ分発動以降、企業は顧客離れを嫌って輸入関税引 き上げ分を企業努力によって吸収し続けている。その結果、8月消費者物価指数(CP I)ではインフレ加速化の堅調な傾向は見られていないものの、上昇する輸入価格の調 整手段の一つになっているのが人件費の削減など、雇用に関する事項と見られる。 8月の米生産者物価指数(PPI)の前年同月比が事前予想の+3.3%を下回る +2.6%の伸びにとどまりながらも、その一方で卸売業者と小売業者の利益率が 1.7%低下しているという発表からも垣間見ることが出来る。 雇用情勢が停滞した状態が続けば、利下げによって景気刺激を画策しても不発に終わ る可能性がある。それだけに米経済不安を払しょくするためにも米雇用情勢が回復する 必要があると見られるが、企業努力によって物価の上昇が抑制されていることが雇用情 勢の軟化を招き、これが購買力の低下を促すため企業による価格転嫁の動きはますます 困難になるという悪循環が見られている。 この悪循環を断ち切るためには価格上昇を吸収できるほどの力強い個人消費が必要と なるが、雇用情勢が軟化傾向にあるだけにその期待は薄い。SPDRの金ETF残高の 増加も、この米経済の悪循環が意識された結果と見られる。 26日に米連邦準備理事会(FRB)が注目する個人消費支出(PCE)の発表があ る。この結果が米利下げ観測を強めるものであれば、利下げとこれに伴うドル安観測、 物価の高止まり懸念がNY金市場の強気材料となる一方、利下げ観測を後退させる内容 であった場合は米経済不安を高め、結果として安全資産としての金需要を刺激する要因 になると見られる。安全資産を求める動きが継続的に見られる状況に変わりはなく、N Y金12月限は3800ドル台定着の可能性を含んだ高値圏でのもみあいを想定する。 MINKABU PRESS
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