きょうのNY為替市場は前日に引き続きドル売りが優勢となった。ただ、円安の動きも見られており、ドル円は底堅い推移を見せている。前日はトランプ大統領によるパウエルFRB議長の利上げ姿勢への非難や、中国、欧州の為替操作への言及などトランプ発言でドル売りが強まった。ドル円も本日の東京時間には心理的節目の110円を割り込み109.80円近辺まで下落する場面も見られている。本日109.85円付近に来ている200日線も一時下回った。 しかし、きょうの市場は、米株式市場でS&P500が最高値を更新したことや、原油も堅調に推移するなど全体的にリスク選好の雰囲気が出てドル円をサポートしている。110円台を回復し一時110.55円付近まで上昇。 トルコがきょうから大型連休に入っているが、逆にトルコ発の悪材料も出ないということも安心感につながっているのかもしれない。また、トランプ大統領からは否定的な発言が出ていたが、今週の次官級の米中通商協議への期待感も市場の中で根強くあるようだ。 そのほか、今週はジャクソンホールでのFRBのシンポジウムが予定されている。パウエル議長も講演を行うが、トランプ大統領のけん制にもかかわらずFRBは利上げを正当化してくるとの見方は強い。きょうはカプラン・ダラス連銀総裁の発言が伝わっていたが、漸進的に中立水準まで利上げを行うべきとしており、中立水準にはもう3回か4回利上げが必要との認識を示していた。 一方、ユーロドルの買い戻しが加速し、1.16ドル台まで一時上昇。きょうは心理的節目の1.15ドルを回復し、1.1550ドル付近に来ている21日線も上抜いている。6月から7月にかけて続いたレンジ相場の下限も回復。 ただ、下値警戒感も強く自律反発の範囲との見方も少なくない。トルコ問題など政治リスクが落ち着き、市場の関心が経済のファンダメンタルズに戻ったとしても、米国と比較すればユーロ圏の景気回復は脆弱で、ECBの利上げ時期が前倒しされる可能性は低く、ユーロドルは再び下値模索となると見ている向きは多いようだ。 また、イタリア財政への懸念も根強い。ポピュリスト政権が財政拡大策に積極姿勢を示しており、財政規律遵守を求めるEUとの軋轢も懸念されている。ここ数日、イタリア国債は買い戻しも見られているがなお波乱含みの展開ではある。ただ、一部からは10月にはECBの大量購入が期待できるとの指摘も出ている。あくまでテクニカル的な要因で、ECBは資産購入プログラムにより大量にイタリア国債を保有しているが、その償還が来ることから買い換え需要が発生する可能性があるという。それに伴いイタリア債はサポートされるのではとの期待も出ている。 ポンドも買戻しが加速。ポンドドルは安値から100ポイント超上昇しており、一時1.2925ドル付近まで上昇している。きょうはラーブ英EU離脱相とEUのバルニエ首席交渉官が英国のEU離脱で協議を行っていた。市場も何らかの発言があるか注目していたが、さほど大きな動きまでには至っていない。来週も協議を行うようだ。 ロイター通信が11月にEU緊急首脳会談が行われると報じている。市場は合意なき離脱に警戒感を示していたが、ここに来てその警戒も緩んでいる。リスクは留意しているものの、最終的には何らかで合意するという楽観的な見方が実は支配的ではある。 minkabu PRESS編集部 野沢卓美
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