アフガン民主政権崩壊の影響は?

著者:菊川 弘之
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 アフガニスタンでは、グローバル企業のプレゼンスが限られており、国際金融市場とのつながりは極めて小さく、短期的には金融市場への影響は限定的となるだろう。

 ただし、今回の親米民主政権の崩壊は、「中国包囲網」のため、「民主主義国と権威主義国」の対決構図で欧州取り込みを図っているバイデン政権や、米国覇権の長期的な継続性に疑問を投げ掛けるものとなる。

 カブール陥落は、米ドルと米国債市場によって弱材料となる一方、中東で今後、影響力を増す中国やロシアの通貨や債券市場には強気の材料になるだろう。

 アフガニスタンではタリバン以外に、ロシアが後見しているタジク族(タジキスタンと同じ民族)と、ハリリ派(イランと同じ十二イマーム派のシーア派)が勢力を強めると見られるが、米国は、イランとロシアとの協力を得てタリバンを抑え込むという仕組みをつくらないと、アフガニスタンが再び大混乱となる可能性は大きい。更に、アフガンが再びテロの温床となれば、テロの対象は、米国のみならず、新疆ウイグル問題(イスラム教を弾圧)を抱える中国もターゲットになるかもしれない。

 各国の中央銀行がドルの保有を減らしながら、金の保有を増やしているのも、短期的な上げ下げではなく、中長期的な覇権や基軸通貨体制の揺らぎなどを見越しての動きかもしれない。

 原油市場は9月のレイバーデーで夏季のガソリン需要がピークアウトする。暖房油需要が始まる前の季節的な需要端境期には下げ圧力が高まりやすい。新型コロナウイルスの変異型感染拡大懸念も強まる中、米エネルギー情報局(EIA)月間報告で、9月の国内シェールオイル生産量が2020年5月以来の高水準になるとの見通しが示され、季節的な下げ圧力が先行しそうだが、今後、供給障害を伴った中東の地政学リスクが発生する可能性を考慮すると、相関の高い米株式市場の大崩れがなければ、季節的な下げは限定的となるかもしれない。

 金・原油市場にとっては、強気要因となりそうだ。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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