[Vol.1111] OPECプラス会合の最大の焦点

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。81.31ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。1,777.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年01月限は13,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。21年12月限は510.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで727.35ドル(前日比14.05ドル縮小)、円建てで2,677円(前日比24円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(11月4日 18時4分頃 6番限)
6,501円/g 白金 3,824円/g
ゴム 219.4円/kg とうもろこし 38,280円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「OPECプラス会合の最大の焦点」

前回は、「ガソリン小売価格はこの1年半でおよそ1.3倍」として、この1年半の、レギュラーガソリン、ハイオク、軽油、灯油の小売価格の推移に注目しました。

今回は、「OPECプラス会合の最大の焦点」として、本日11月4日(木)、日本時間夜に、産油国のグループであるOPECプラスが開催する会合の焦点について、書きます。

今晩、産油国のグループであるOPECプラス(※)は、消費国側の追加増産要請に対し、一定の反応をすることになります。「第22回 OPEC・非OPEC閣僚会議」がその舞台です。

※OPECプラス…サウジアラビア、イラクなどOPEC加盟国13カ国と、ロシア、アゼルバイジャンなど非加盟国10カ国の合計23の主要産油国のグループ。世界の原油生産シェアはおよそ50%。2021年9月時点。

会合の最大の焦点は、「OPECプラスが、消費国の要請に応じて、過度な増産(予定していた日量40万バレルを上回る増産)を実施することを決定するかどうか」です。

9月の会合の際、バイデン政権から寄せられた増産要請を、OPECプラスはのみませんでした。今回は、日本(公式に)をはじめ、公式・非公式の別はあれども、中国やインドなども、増産を要請していると報じられています。

こうした世界的な、主要国が足並みをそろえた増産要請を、OPECプラスがのんだ場合、何が起きるのでしょうか。

要請をのんだ場合、OPECプラスからの原油生産量が増加する思惑が強まり、原油相場は下落する可能性があります。のまずに突っぱねた場合、世界の石油の需給バランスが引き締まる観測が続き、原油相場はさらに上昇する可能性があります。

副次的な効果・影響として、要請をのんだ場合、OPECプラスは「救ってやった」と消費国に恩に着せ、一時的な原油価格の下落を容認しつつ、来月の会合(会合は毎月予定されている)で再び計画通りに戻す(過度な増産をやめる)、などが考えられます。

要請を突っぱねた場合は、追加増産を要請した日本や米国をはじめとした主要国とOPECプラスの対立が鮮明になります。そしてOPECプラスは、自身の存在を否定的に映す「脱炭素」への不満を世界に知らしめながら、さらなる輸出単価(原油価格)上昇の恩恵を享受することになると、みられます。

およそ半世紀前、市場関係者や一般市民は、そうそうたる主要国の要請を突っぱねるOPECの姿を、「わが道を行く」ことを優先して原油相場を大暴騰させた「オイルショック」の時に目の当たりにしました。

「自らの原油生産量とその価格は自分で決める」「欧米の石油メジャーに決めさせない」というゆるぎない意志が、彼らを「オイルショック」へと突き動かしました。

今、「脱炭素」の大合唱の中にあって劣勢に立たされているからこそ、「オイルショック」の精神が沸き上がり、「あえて要請を突っぱねる」、展開が起きないとは言えないでしょう。

今晩の会合は、OPECプラスが本気で、脱炭素をうたう国を敵に回す覚悟があるか、本気度が示される会合と言えるかもしれません。

筆者は今、「オイルショック」の「オ」の字くらいは、警戒してもよい時間帯にいると感じています。

図:11月4日(木)の会合の最大の焦点


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。