[Vol.1159] 物価高の要因を個別と底上げに分ける

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。85.92ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反発などで。1,816.50ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年05月限は14,900元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年03月限は544.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで829.2ドル(前日比3.7ドル縮小)、円建てで3,064円(前日比19円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月19日 18時53分頃 6番限)
6,676円/g 白金 3,612円/g
ゴム 248.7円/kg とうもろこし(まだ出来ず)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「物価高の要因を個別と底上げに分ける」

前回は、「身近な品物の価格が上昇している」として、日本の消費者物価指数(CPI)ついて書きました。

今回は、「物価高の要因を個別と底上げに分ける」として、足元で起きている物価高の背景を考えます。

前回述べた、物価高の主因とされる「原材料価格の上昇」に関連する、国際商品価格の価格動向について、主要銘柄の新型コロナショック直後の2020年4月末から、2022年1月14日までの騰落率を確認すると、「ほぼ全部」高いことがわかります。

エネルギー(原油・天然ガス)、農産物(コーヒー、菜種、綿花、大豆油、砂糖、大豆、生牛など)、各種金属(アルミニウム、銅、ニッケル、亜鉛など)、いずれも価格が上昇しています。

こうしたコモディティ銘柄の上昇は、日本にとっては「原材料高」になります。末端の製品やサービスに与える影響について、「個別」と「底上げ」に分けて考えると、より鮮明に状況が見えてきます。

原材料価格が上昇したことが、末端の製品・サービス価格上昇の主因なのであれば、自動車や電子部品、食用油、牛丼、ポテトチップスなどの価格上昇は、それぞれの原材料である、各種金属や鉄鉱石、各種農産物の価格上昇が主因、ということになります。

確かにその面もありますが、筆者はそれだけではないと考えます。「電力価格の上昇」と「輸送コストの上昇」による、「流通コストの底上げ」も、末端価格を押し上げる一因になっているためです。

電力や輸送に関わるコストが上昇すれば、流通段階におけるさまざまなコストは底上げされます。食料や各種サービスの価格上昇の多くは、「個別上昇」+「底上げ」という、2段構造で生じていると言えるでしょう。

「電力価格の上昇」と「輸送コストの上昇」の主因は、上図のとおり、エネルギー価格の上昇です。なぜ今、エネルギー価格が上昇しているのでしょうか。次回以降、筆者の考えを述べます。

図:国際商品価格が小売価格に与える影響(原材料が海外で生産されている場合)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。