[Vol.1165] 原油市場の「2段構造」

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。87.00ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,809.90ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年05月限は14,105元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年03月限は542.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで789.5ドル(前日比5.7ドル拡大)、円建てで2,952円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(1月27日 16時58分頃 6番限)
6,680円/g 白金 3,728円/g
ゴム 235.2円/kg とうもろこし-円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「原油市場の「2段構造」」

前回は、「物価高は「2段構造」で起きている」として、「物価高」の背景について、筆者の考えを書きました。

今回は、「原油市場の「2段構造」」として、足元の「原油高」の背景について、筆者の考えを書きます。

前回述べたとおり、足元の「物価高」は、「【黎明期】の脱炭素」と「原油高」の2段構造で発生していると考えられます。原油高は直接的、同時に電力価格や流通コストを押し上げる間接的な物価高の要因です。

原油相場は昨年末来、10%以上、上昇しています。以下のグラフで、昨年末来の原油相場の推移を確認します。

1月5日(水)、12日(水)の深夜は、EIA(米エネルギー情報局)が週次の石油統計で原油や石油製品の在庫を公表し、原油在庫の減少が目立ったことが確認され、米国国内の需給引き締まりが意識された時間帯です。

また、1月10日(月)はカザフスタン、14日(金)はウクライナ、17日(月)はUAEを中心とした中東地域における情勢悪化により、石油の供給減少懸念が強まりました。こうした石油に関わりが深い地域の供給減少懸念は、時間帯(アジア、欧州、米国)の区別なく、原油相場を押し上げます。

今年に入り、原油相場は、米国の石油需給の引き締まり(≒原油在庫減少)と、主要供給国やそれに関わりが深い地域の情勢悪化、同時に、「【黎明期】の脱炭素」が、じわりと、中長期的な上昇圧力をかけている(上昇要因の2段構造)ことにより、上昇していると言えるでしょう。

図:WTI原油先物 期近限月 60分足 終値(日時は日本時間) 単位:ドル/バレル


出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。