[Vol.1207] 「露中北」の東アジアにおける役割分担

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米国による石油戦略備蓄放出の報道などで。102.84ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米主要株価指数の反発などで。1,922.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。22年09月限は13,875元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。22年05月限は670.1元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで935.35ドル(前日比5.15ドル縮小)、円建てで3,701円(前日比18円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月31日 大引け 6番限)
7,514円/g 白金 3,813円/g
ゴム 259.9円/kg とうもろこし 50,000円/t

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「「露中北」の東アジアにおける役割分担」

前回は、「露中北の3月4週目の動向」として、3月4週目(20日~26日)に見られた、「露中北」の具体的な動きを確認しました。

今回は、「「露中北」の東アジアにおける役割分担」として、3月4週目(20日~26日)に見られた、「露中北」の具体的な動きから推測できる、3カ国の役割について述べます。

3月4週目の動きを振り返れば、共通の敵「米国」の存在が、「露中北」の連携を強めていると言えるでしょう。米国がロシア制裁を強めたことをきっかけに、ロシアと米国の関係がこれまで以上に悪化。この流れが中国と米国、北朝鮮と米国の関係悪化を加速させ、共通の敵と対峙(たいじ)する「露中北」の連携強化が進んだ可能性があります。

連携の中身は、以下のとおりだと、筆者は考えています。ロシアは、巨大消費国である中国へエネルギーや金属、食糧などの資源を供給する。中国はその見返りに、高度化した各種製品をロシアに提供したり、ロシア産の各種資源を世界に供給する販売役を担ったりする。

北朝鮮は、いつでも武力行使ができることをアピールし、米国や同盟国を威嚇し続ける。ロシアは、米国が指摘するとおり、北朝鮮に弾道ミサイル開発に関わる技術を供与し、威嚇行為をほう助している可能性あり。

こうした連携が機能すれば、ロシアは国際的な金融・貿易の枠組みから排除されたとしても、中国から物資を入手したり、中国を経由して自国の資源を世界に販売したりすることができます(この3国は陸続きゆえ、地下にトンネルを掘ってしまえば、衛星で物資の往来を把握することは困難)。

また、ロシアと中国は、北朝鮮との対話の窓口という重要な立場にあることをアピールすることで、国際社会から完全に排除されることを回避できます。その他、3国いずれも「核保有国」である点も「同じ穴の狢(むじな)」的な要素で、連携を強化する動機となったと考えられます。

岸田総理大臣は3月27日(日)、「力による一方的な現状変更を東アジアで決して許してはならない」と、述べました。主要メディアでは、この発言は中国を念頭に置いているとされていますが、筆者は3月4週目で見られた上記のような「露中北」の急速な連携強化を意識した発言だったとみています。

岸田総理は上記のほか、「事態の展開次第では戦後最大の危機を迎えることになる」と発言しました。事態の深刻さが増していることがうかがえます。

図:東アジア「露中北」の役割

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。