原油、上値リスク高い

著者:菊川 弘之
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 欧州連合(EU)は5月30日、ロシア産石油のEUへの輸入を禁止することを柱とする追加制裁で合意したが、抜け穴だらけの妥協が図られた格好だ。元々ロシア産石油は25%程度で、海上からの流通ルートが多く、しかも半分は製品輸入なので、ロシアがEU外に原油輸出して精製すれば、どこが原産か判別できない。

 合意した禁輸措置は海上輸送の石油を対象として、陸上パイプラインで運ばれる石油は例外扱いとなった。反対を表明していたハンガリーの石油供給には、当面影響しない。さらにハンガリーは陸上パイプラインからの供給が途絶した場合に、別の手段で供給を受けられる権利を手にした。

 また、石油以上に欧州経済に影響の高い天然ガスの扱いは、今回の制裁案ではノータッチのまま。ロシアは制裁で天然ガスの供給を止め始めているが、EUにとってガス供給停止は耐えられないが、ロシアにとっての打撃は石油の10分の1(輸出額ベース)で、制裁合戦では欧州の方が厳しいとも言える。

 2月25日の開戦から100日が経過したが、ウクライナのゼレンスキー大統領が、ロシアに領土の2割を奪われた状態にあると表明。ロシア系住民が多いウクライナ東部のドンバス2州で、ロシア軍がウクライナ軍を制圧しつつあり、ウクライナ戦争はロシア優勢で推移する中、停戦協議に向けた駆け引きが水面下で始まっている感触だ。

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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