原油、上値リスク高い

著者:菊川 弘之
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 NY原油(7月限)は、年初来高値を更新。価格帯別出来高の厚い110ドル水準の下値支持が確認された一方、米雇用統計で、非農業部門の雇用者数が前月比39万人増え、4月(43万6000人増)からは減速したが、市場予想(32万8000人増)を上回り、平均時給は前年同月比5.2%増と高い伸びが続き、米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引き締めが、秋以降も続くとの警戒が上値を抑え、上ヒゲで週末は引けている

 原油・製品在庫が低水準の中、米ドライブシーズン入りとなり、夏季休暇中の「リベンジ旅行」に伴うジェット燃料需要の増加が想定されることに加え、米ハリケーン多発予報や、イラン革命防衛隊の大佐が射殺(5/22)され、ライシ大統領がイスラエルに報復するとの発言(5/23)、サウジ・イエメン間の停戦期間が終了(6/2)など強材料が多く、調整が入っても下値は限定的。上値リスクの高い時間が続きそうだ。米国ガソリン小売価格は、既に原油価格が150ドルを伺う展開となった2008年高値を上抜き、過去最高値を更新中だ。

 今週は、国際原子力機関(IAEA)理事会が6日から、ウィーン本部で5日間の日程で開幕する。イランによる核開発をめぐり、非難決議案の提出を模索する米国や欧州諸国にイランやロシアは反発しており、紛糾は必至だ。

 これに対しイランのアブドラヒアン外相は3日、IAEAでの米欧の政治的行動には「即時の反応」を行うと警告。ロシアのウリヤノフ在ウィーン国際機関常駐代表も4日のツイッターで、決議が採択されれば「核合意再建はさらに困難になる」と強調した。イラン問題は8日に討議される見通し。

 

このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

NSトレーディング株式会社 代表取締役社長 / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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