[Vol.1262] できるだけ「不安」の力を借りないこと

著者:吉田 哲
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原油反落。主要株価指数の反落などで。104.39ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,826.75ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。22年09月限は12,500元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。22年08月限は683.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで897.4ドル(前日比1.9ドル縮小)、円建てで3,953円(前日比14円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月22日 17時45分頃 6番限)
7,960円/g
白金 4,007円/g
ゴム 254.2円/kg
とうもろこし 52,750円/t
LNG 4,150.0円/mmBtu(22年6月限 4月7日午前8時59分時点)

●NY金先物(期近) 日足  単位:ドル/トロイオンス


出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「できるだけ「不安」の力を借りないこと」

前回は、「金(ゴールド)投資の必須スキル3つ」として、金(ゴールド)投資を行う上で欠かせない3つのスキルを確認しました。

今回は、「できるだけ「不安」の力を借りないこと」として、金(ゴールド)投資を行う上で欠かせない3つのスキルのうち、(2)材料の影響力を足し引きすること、(3)できるだけ「不安」の力を借りないこと、について述べます。

以下の図は、特にウクライナ危機発生後に目立っている事象についての問いと、その解答です。しばしば「教科書的」と例えられる「ドルと金(ゴールド)の逆相関(逆の動きをする傾向)」が成り立たない事象が起きており、それを「材料の足し引き」で説明しています。

「教科書的」でない値動きも、「材料の足し引き」を持ってすれば、容易に説明ができます。材料を俯瞰し、時間軸を絞って注目すべき材料に注目し、影響力を足し引きするスキルは、環境が複雑化した現在の金(ゴールド)市場を分析するために欠かせません。

筆者は、「不安=金(ゴールド)」という考え方を否定的にとらえています。あえてそうすることで、材料を点で見る(俯瞰しない)ことを避けることができます。ひいてはそれが、時間軸を絞ること、材料の影響力を足し引きすることを可能にします。

「不安」は、「[Vol.1258] 人:感情を「不安」と「充足」に分けて考える」で述べたとおり、人を行動にみちびく重要な感情の一つです。しかし、それが全てではありません。対極にある「充足」もまた、人を行動にみちびく要素の一つです。「不安」にしか注目しないことは、物事の一部しか見ていないことと同じです。

環境が複雑な現在の金(ゴールド)市場を分析するためには、できるだけ「不安」だけで説明しようとすることを避けなければなりません。「過去にやっていたから」「わかりやすいから」という理由で「不安」を利用しても、正しい分析をすることはできないでしょう。

図:金(ゴールド)市場の見方(材料の足し引き)


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。