米中貿易摩擦の大団円は近い

著者:近藤 雅世
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 インド、中国、タイ、トルコ等世界的に金の需要、特に宝飾品需要が減少している。それぞれの国の通貨が安くなっていることもあり、国内通貨建て金価格が上昇しているためだ。そうした国の宝石店には、過去に購入した金を換金売りする人々が列をなしている。これは金のスクラップとして金の供給量を増やす。

 一方、高価となった宝飾品は今すぐ買おうという人は少なく、金の需給は緩んでいる。昨年の金の大きな需要は、金のETFと政府保有金であった。ロシアや中国の中央銀行は今年に入ってからも旺盛な金購入を続けている。中国の外貨準備高は、人民元の下落と米国との貿易戦争の激化にもかかわらず3兆1072億ドルに跳ね上がり、9カ月で金保有量を約289万トロイオンス(99トン)増やした。これは、昨年末からほぼ5パーセントの増加だという。

 8月1日、トランプ大統領は対中国輸入関税第4弾を表明し、9月1日から実際に輸入関税を引き上げた。それに対して中国は米国からの輸入品に対して報復関税を課した。

 こうした米中貿易摩擦により、景気が悪くなるという心理的不安により株価は下落した。しかし、そろそろ米中貿易戦争は大団円を迎えるだろう。香港の騒動が中国本土に飛び火することを恐れる習政権は、景気の悪化を食い止めるため、貿易協議で妥協するのではなかろうか。

 また来年に大統領選挙を控えるトランプ大統領は、このまま不景気が続くことは得策ではない。トランプ氏一流の交渉術の筋書きは、大統領選挙の前に、自らが起こした様々な軋轢を解決して景気を上向かせるシナリオであろう。米中貿易協議の行方に株式市場は神経質になっているが、金価格は株価の動きと逆になる可能性が高い。
 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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