[Vol.1496] 減産継続は、長期視点で相場を下支えするため

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。71.91ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,977.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は11,855元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年07月限は529.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで937.05ドル(前日比1.40ドル縮小)、円建てで4,253円(前日比61円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(6月6日 14時02分時点 6番限)
8,775円/g
白金 4,522円/g
ゴム 210.3円/kg
とうもろこし 40,880円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「減産継続は、長期視点で相場を下支えするため」
前回は、「OPECプラス、2024年までの減産継続を決定」として、リーマンショックを起点とした原材料価格高止まりの背景について、筆者の考えを述べました。

今回は、「減産継続は、長期視点で相場を下支えするため」として、減産実施時の減産参加20カ国の原油生産量など(一部筆者推定)について、述べます。

以下は、減産実施国(20カ国※)の原油生産量、減産時の基準量、生産量の上限です。自主減産は全体の取り決めと別であるため、報じられているサウジアラビアによる日量100万バレル/日量(以下日量)の自主減産は含まれていません。

※OPECプラス(23カ国)のうち、リビア、ベネズエラ、イランの3カ国は減産に参加していない。このため、生産量の上限は適用されていない。

2024年の生産量の上限(オレンジ線)は、今回の会合で決定した4,046万バレルです。今年4月の会合で決定した、今年の5月から12月までの追加減産(166万バレル)分とロシアの減産基準量の下方修正(1,100万バレル→1,013万バレル※)を考慮した、現在の生産量の上限(今年12月まで)は、筆者の推定でおよそ3,985万バレル/日量です。

※会合の資料に基づき、2023年2月の原油生産量を参照。ライスタッドエナジーのデータより。

4,046万バレルと3,985万バレルの差分のおよそ60万バレル分、今よりも来年の方が多い、つまり今よりも来年の方が、図中の200万バレル減産、166万バレル追加減産の赤矢印で示したような、生産量を大きく変化させずに上限だけを引き下げて減産実施という体をつくる、「表向きの減産」がしやすくなるわけです。

「表向きの減産」は、大きな減産をせずとも(減産を)実施すると宣言をするだけで、勝手に反発してくれる市場の性質を利用した策です(実際、4月も今回も、短期視点で原油相場はそのように動いている)。

今回の会合が「長期視点」だったのは、OPECプラスが、来年のいずれかのタイミングで減産を強化する腹積もりであるためだと、考えられます。OPECプラスは、これからも長期視点で、原油相場を下支えしたいと考えていると言えるでしょう。

図:減産実施時の減産参加20カ国の原油生産量など(一部筆者推定) 単位:万バレル/日量
図:減産実施時の減産参加20カ国の原油生産量など(一部筆者推定)

出所:OPECの資料およびライスタッド エナジーのデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。