[Vol.1516] 米国発の「二つの綱引き」が市場を席巻

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.09ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。1,930.55ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。23年09月限は12,065元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。23年08月限は548.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1009.35ドル(前日比1.55ドル縮小)、円建てで4,711円(前日比38円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月4日 10時01分時点 6番限)
8,908円/g
白金 4,197円/g
ゴム 205.2円/kg
とうもろこし 41,350円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「米国発の『二つの綱引き』が市場を席巻」
前回は、「株価指数、ドル、国際商品は明暗分ける」として、2023年上半期の主要銘柄の騰落状況(概況)について、述べました。

今回は、「米国発の『二つの綱引き』が市場を席巻」として、筆者が考える米国発の「二つの綱引き」(2023年上期)について、述べます。

前回、2023年上半期は、暗号資産、株価指数、農産物、金(ゴールド)が上昇、ドルに直接的に関わるドル指数と米10年債利回りは小規模な動き、穀物、金属、エネルギーが下落し、分野ごとの明暗がはっきり分かれたと書きました。こうした値動きの主因となったと考えられるのが、米国の動向です。

以下の図のとおり、上半期、米国では「二つの綱引き」が起きていたと、筆者は考えています。一つ目は、利上げペース鈍化(ドル安・金利低下)と利上げ継続示唆(ドル高・金利上昇)の綱引き、二つ目は、利上げ継続示唆と銀行の不安連鎖が同時にもたらす不安拡大(株価・エネルギー価格下落)と利上げペース鈍化起因の不安縮小(株価・エネルギー価格上昇)の綱引きです。

ドルの動向は、コモディティ(国際商品。ほとんどがドル建て)価格の動向に影響を与えます。おおまかに言えば、ドル安(高)・コモディティ高(安)です。ドルが安い(高い)時、ドル建てのコモディティに、他の通貨建ての同じ商品と比較した割安感(割高感)が生じるためです(一因)。

上半期、ドルは騰落状況上、大きな動きにはならなかったものの、期間中は小規模な波が生じていました。この点は、一つ目の綱引きが生じていたことを裏付けるものです。この波はコモディティ市場に、上昇・下落の圧力を交互にかけ続けたと、考えられます。

二つ目の綱引きは、不安拡大と不安縮小との間で起きたと考えられますが、騰落状況から逆算すると、不安拡大が穀物、金属、エネルギーなどのコモディティ銘柄に下落圧力を、不安縮小が株価指数に上昇圧力をかけたと考えられます。

金(ゴールド)相場が小幅に上昇したのは、一つ目の綱引きのドル安の部分と、二つ目の綱引きの不安拡大の部分による上昇圧力が、下落圧力(ドル高・不安縮小)に勝ったことが大きいと、考えられます。

図:米国発の「二つの綱引き」(2023年上期)(筆者イメージ)
図:米国発の「二つの綱引き」(2023年上期)(筆者イメージ)

出所:筆者作成 画像はPIXTA

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。