トルコと金

著者:近藤 雅世
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 金価格が上昇すると宝飾品やコインの販売が低迷するのは致し方のないことである。

 米国の造幣局は金の貨幣型コインの1月~9月の販売が前年同期比▲46%減となったと述べている。しかし中には例外もある。

 トルコの造幣局は、9月の金貨の販売が、今年5月~7月の減少の後、ここにきて売り上げを急増させていると言う。1月から9月の9カ月では前年比+2%増となった。トルコリラは2009年の1.53リラ/ドルから5.65リラ/ドルにまで、この10年で約3.7分の1倍に安くなっている。

 日本円で言えば、9年前の1万円の価値が現在では2700円相当になってしまったということである。あるいは1万円で買えたものが、今や3万6900円出さないと買えなくなっている。その一方、金価格はドル建て金価格の値上がりとトルコリラ安により約6倍に上昇している。そのため金は絶好の投資対象とみなされている。

 また、金はトルコにおける銀行経営にも一役買っている。昨年の通貨危機により不良債権が急増し、銀行の流動性が損なわれているが、トルコ中央銀行は政府と協力して流動性を保つためにこの10月、外貨と金の交換市場を創設する。

 2011年、トルコ中央銀行は民間銀行に対し、トルコリラの準備金保有要件の10%相当額を英国銀行のトルコ中央銀行口座に、金を保管することで認める政策を作った。2012年10%は3回引き上げられて30%となった。2016年9月には更に5%の保有を金のスクラップでも良いことにした。2015年初頭には、英国銀行の半分の保管コストで済むthe Borsa Istanbul の保管庫で金を保管することを認めた。2017年1月にはそれまでのラージバー以外にも1キロ塊もOKとした。

 民間銀行はトルコリラの枠をほぼ使い果たし、金の枠もほとんどなくなっている。残ったのは金のスクラップの枠だけである。

 金のスクラップの比率は今年3月に5%から10%まで良いことに増枠された。今年10月の金と外貨のスワップ市場創設は、トルコの民間銀行が流動性を確保するために残されたほぼ最後の手段である。トルコ政府が民間銀行を支えるのに金を使ってきて、金価格上昇がそれを可能にしてきたが、いよいよその策も最後に近づきつつある。
 

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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