[Vol.1566] 「高水準維持」が目先のメインシナリオ

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。89.05ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。1,928.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年01月限は14,440元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。23年10月限は728.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1022.8ドル(前日比4.50ドル縮小)、円建てで4,780円(前日比7円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(9月14日 17時58分時点 6番限)
9,027円/g
白金 4,247円/g
ゴム 235.6円/kg
とうもろこし 38,990円/t
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードⅡ」より

●本日のグラフ「『高水準維持』が目先のメインシナリオ」
前回は、「『同調』と『排他』の合わせ技は『攻撃』」として、2023年6~9月の西側と非西側における目立った動きについて、書きました。

今回は、「「高水準維持」が目先のメインシナリオ」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格について、書きます。

今後も、OPECプラスによる減産を強化する動き(削減量拡大や延長など)は続くのでしょうか。また、それにより原油価格はさらに上昇し得るのでしょうか。

筆者はこの問いの答えは、Noだと考えています。原油価格を上昇させればさせるほど、負の影響を与えたい国だけでなく、自分たちと同じ非西側に属する国々への影響も大きくなってしまうリスクがあるためです。減産を強化すればするほど、切ることができるカードが少なくなってしまうことも、強化の動きを鈍らせる要因になり得ます。

すでに来年12月末まで、現在の減産を継続することを決定しているため、目先、「延長」のカードを切ることは現実的ではありません。

できる強化策といえば、OPECプラスに新しい産油国を引き入れて減産の規模を大きくすることだと、筆者は考えています(OPECの6月27日付のニュースリリースには、ベネズエラの東側にあり、OPECプラス内でマレーシアと同程度の原油生産を誇るガイアナが、重要な可能性を秘めた国である旨の記載がある)。

また、当事国らの収入が一段と減少しないよう、当面、個別の国の削減量を増やすことは実施されないと、筆者は考えています。削減量を増やす役割は引き続き、生産量が多くグループ内で発言権が大きい、サウジとロシアが行うと考えられます。

また、現在の原油価格は、サウジの財政収支が均衡するために必要な原油価格(以下参照)付近です。ある程度、この数カ月間行ってきた減産強化は功を奏したと言えるため、減産の主目的は今後、現在の水準を「維持」することに移行する可能性があります。

原油価格を上昇させすぎることでデメリットが生じること、切ることができるカードが少なくなっていること、ある程度満足できる価格帯まで上昇させることに成功したことなどを考慮すると、これからは価格を下げないよう「減産を強化するかもしれない」など、口先介入を断続的に行う可能性があります。

図:主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格 単位:ドル/バレル
図:主要原油輸出国の財政収支が均衡する時の原油価格 単位:ドル/バレル

出所:IMF(国際通貨基金)のデータをもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。