週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比5.18ドル安の76.09ドル、ブレント原油は5.03ドル安の80.42ドルとなった。

 前週末2日の海外原油はFOMCを通過した安心感からドル安・株高進行したことに支えられ堅調な推移となった。翌3日は米国務長官がイスラエル首相と会談して戦闘の中断を要請したことなどから地政学リスクが後退したほか、米雇用統計が軟調な内容となったことが嫌気され反落する格好となった。

 先週は中東の地政学リスクが後退しているほか、需給の緩みが意識される中で軟調な推移となった。週明けはサウジやロシアが年末にかけても自主減産を継続すると公表したほか、12月に減産規模や延長の是非を再検討すると伝わったことが支えとなり堅調な推移となった。翌7日はサウジやロシアが供給制限を実施している一方、OPECとしては原油輸出量が増加しており、需給バランスが緩んでいるとみられていることが重しとなった。また、ドル高進行しているほか、中国経済への先行き不透明感も下押し材料となった。翌8日も需給の緩みが嫌気される中で軟調な推移となると、ユーロ圏の小売売上高が前年比2.9%減と弱い内容となり、景気後退による石油需要の減少懸念が強まったことが相場を圧迫する格好となった。週末にかけては前日までの急落に対する押し目買いの動きから上昇すると、ブレント原油で80ドルを回復する動きとなった。一方でパウエルFRB議長が適切となれば、躊躇なく追加利上げを行うと発言したことなどからドル高進行すると、上値からは上げ幅を縮小した。

原油チャート

 今週の原油相場は方向感を探る展開となりそうか。中東の地政学リスクが後退しているほか、米国のインフレや欧州や中国の景気後退懸念により需要の減少が警戒されており、需給の緩みが意識されていることは重しとなる一方、サウジとロシアが減産の延長を表明したほか、中国の原油輸入は堅調だったことが好感されている。また、米エネルギー相が12月・1月とSPRを補充する意向を示しているが、希望価格の79ドル以下は現在の価格とマッチしているため、買い付けを前倒しするとの思惑も支えとなりそうだ。WTIで75ドル、ブレント原油で80ドル付近では押し目買いが入るなど支えられており、底入れとみれば反発する可能性も想定されそうだ。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。