週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比5.08ドル安の70.79ドル、ブレント原油は4.95ドル安の75.67ドルとなった。

 前週末の海外原油は続落。OPECプラスの追加減産が限定的だったことが引き続き相場を圧迫したほか11月の米ISM製造業景気指数が46.7と13ヵ月連続で景気判断の分岐点である50.0を下回ったことから需要後退を意識した原油売りが続いた。

 先週は来年にかけての景気悪化見通しがクローズアップされリスク回避の動きが強まった。週明け4日はOPECプラスの追加減産の効果に対する不透明感から続落。生産制限のないイランを含め増産傾向にある国が複数みられるほか、米国の原油生産量は過去最高水準で推移しており供給過剰懸念が強い。5日も続落。例年1-3月期は季節的な需要減少期で在庫が積みあがりやすく相場を圧迫している。翌6日はEIA統計でガソリン在庫が+540万Bと予想外の大幅増加となったことや来年の世界的な景気悪化を警戒した売りにさらされ大幅続落。米ADP雇用者数は+10.3万人と予想を下回ったほか10月の米貿易収支では-643億ドルと2ヵ月連続で赤字幅が拡大、特に輸出の減少が景気の鈍化につながると受け止められた。7日は米中の景気悪化による需要下振れ懸念から6営業日連続安。11月の中国貿易統計によると原油輸入は前月比-13.3%、前年比-9.18%となった。また、日銀の植田総裁が「年末から来年にかけてチャレンジングになる」との発言を受け早期のマイナス金利解除が意識され円が急伸、日本の長期債の急落が米国債にも売りが波及し金融市場の混乱が警戒されたこともリスクオフの売り要因となった。

原油チャート

 今週の原油相場は下値模索の展開継続か。OPECプラス会合が失望視された流れで、景気悪化懸念が再びクローズアップされた。チャートが崩れたことでテクニカル的な売り圧力が強まり7月以来のWTI70ドル割れとなっている。8日の米雇用統計、13日の米FOMC公表を控えており積極的に仕掛けにくい流れとなりそうだ。WTI1月限は19日の納会にかけて、もう一段安が仕掛けられるか注目される。その場合の下値の目途はWTI1月限で3月20日につけた今年の最安値64.37ドルが想定される。セリングクライマックスが終わったのか、これからなのか判断が難しいが金融イベントが一巡する13日の新月辺りに底入れするシナリオをイメージしている。なお、原油独自の材料としては13日にOPEC、14日にIEAの月報が発表されるので併せて注目したい。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。