[Vol.2170] 未曽有のホルムズ海峡「ほぼ完全封鎖」

著者:吉田 哲
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原油反落。トランプ米大統領の戦争終結を示唆する発言などで。88.04ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。5,197.44ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年05月限は17,115元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年04月限は666.3元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2963.24ドル(前日比28.44ドル拡大)、円建てで16,204円(前日比111円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月10日 17時38分時点 6番限)
27,379円/g
白金 11,175円/g
ゴム 374.5円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 月足 単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「未曽有のホルムズ海峡『ほぼ完全封鎖』」
前回は、「週の後半に牙をむいた原油相場」として、NY原油先物(期近)週次終値を、確認しました。

今回は、「未曽有のホルムズ海峡『ほぼ完全封鎖』」として、ホルムズ海峡を通過したタンカーの数(過去5日平均)を、確認します。

未曽有の事象が発生しています。図は、国際通貨基金(IMF)が公表している、ホルムズ海峡を通過したタンカーの数です。イラン戦争が勃発する前と勃発した後で、大きな変化が生じたことが分かります。

この未曽有の急減は、先述の「売り手が売りにくい」「買い手が買いにくい」の同時進行によるものと、考えられます。イランが攻撃を続けていることにより、アラビア海周辺の産油国の石油関連施設の一部が稼働を停止し、「売り手が売りにくい」状態が発生しています。

同時に、イランが攻撃を続けていることにより、ホルムズ海峡を多くのタンカーが航行できなくなり、「買い手が買いにくい」状態が発生しています。売り手と買い手、双方において、大きな障害が発生しています。

そして、イランの次期最高指導者に前最高指導者の方針を引き継ぐ人物が据えられるとの報道があり、こうした「売り手が売りにくい・買い手が買いにくい」状況が長期化する懸念が強まっています。

ホルムズ海峡の代替になり得るのは、紅海の南端のバブ・エル・マンデブ海峡経由の輸出です。サウジアラビアの西岸に石油関連施設があり、当該施設から輸出が可能だと報じられています。

ただし、取り扱うことができる量が限定的であること(同国のメインがあくまでアラビア海に面している東岸)、サウジアラビア以外の産油国の原油を扱うことができるか不透明であること、そして同海峡付近で、隣接するイエメンで活動する、イランの支援を受けているとされるイスラム武装組織「フーシ派」により、航行を妨害される可能性があること、などの懸念点があります。

ホルムズ海峡を経由しない湾岸産油国の輸出手段については、アラブ首長国連邦のドバイ付近からオマーン湾に向けたパイプラインがあるとされていますが、取り扱うことができる量が限定的であるという課題もあります。

イランが同海峡に機雷を設置した、という報道はないと思われます。このため、同海峡の完全封鎖はまだ起きていないと言えます。しかし、「売り手が売りにくい・買い手が買いにくい」状況故、航行するタンカーが激減してゼロに近い状態は、完全封鎖ではないものの、「ほぼ完全封鎖」だと言えます。

イランの態度が先鋭化している以上、まだしばらく、ホルムズ海峡の「ほぼ完全封鎖」は続く可能性があります。

図:ホルムズ海峡を通過したタンカーの数(過去5日平均) 単位:隻
図:ホルムズ海峡を通過したタンカーの数(過去5日平均) 単位:隻
出所:IMF「Port Watch」のデータより筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。