週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比2.71ドル安の74.13ドル、ブレント原油は3.02ドル安の79.07ドルとなった。

 前週末の海外原油は続伸。前日までの上昇から利益確定の売りやドル高が重しとなるなか、紅海で石油タンカーがイエメン・フーシ派の攻撃を受けたとの報が相場を押し上げた。

 先週は先週の上昇に対する利食い売りや、地政学リスクの後退が重しとなり軟調な推移となった。週明け29日は反落。中国不動産開発大手・中国恒大集団に清算命令が出されたことで、中国の景気先行き懸念が圧迫要因となった。また、対ユーロでドル買いが優勢となったことも重しとなったが、中東情勢の緊迫感が引き続き支えとなっている。30日は反発。国際通貨基金(IMF)が公表した世界経済見通しで、2024年の世界全体の成長率が昨年10月から上方修正されたことから、エネルギー需要鈍化への警戒感が和らいだことが要因。また、ヨルダン北部に駐留する米軍が無人機による攻撃で3名死亡しており、米バイデン大統領はイランに責任があると発言。米軍が報復をすれば地域情勢の緊迫感がさらに高まるとの見方が広がった。31日は反落。FOMCで市場参加者が期待する3月の利下げ開始が示唆されず、ドル高に振れたことが重しとなった。また、米バイデン大統領がイランへの対応を決定したと発表したものの、未だに軍事行動が見送られていることから、中東情勢の緊迫化が後退したことも圧迫要因となった模様。1日は続落。イスラエルが武装組織ハマスと停戦案に合意したとの報が圧迫要因となった。ただ、ハマスは停戦案を前向きに検討しているものの、まだ返答をしていないと明かしており、最終的な判断には達していない模様。OPECプラス会合ではサウジやロシアの自主減産分を含めて現状維持となり、市場の反応は限定的であった。

NY原油チャート

 今週の原油相場は戻り売り優勢の展開を想定する。中東情勢への懸念が引き続き支えとなっているものの、EIA統計での原油在庫の増加や米中経済の先行き不透明感が重しとなるなかで、一段高を目指すには米国のイランへの軍事行動など新たな買い材料が必要となりそうだ。しかし、イスラエルとハマスが停戦合意に向けて調整を進めている模様であり、上げ余地は限られるとみる。米長期金利の低下からドル安が進んでいることは支えとなっているが、今週末からは中国が春節に入ることからポジション調整の動きにも注意が必要だ。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。