[Vol.1713] 産油国に絡む戦争は食品価格を押し上げる

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。82.34ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,316.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。24年09月限は14,280元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年06月限は637.8元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1395.3ドル(前日比19.80ドル縮小)、円建てで6,918円(前日比10円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(4月23日 17時42分時点 6番限)
11,471円/g
白金 4,553円/g
ゴム 310.1円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル

出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「産油国に絡む戦争は食品価格を押し上げる」
前回は、「異例ずくめの中東情勢、報復合戦が続く」として、イランとイスラエル、イランが支援するイスラム武装組織「抵抗の枢軸」の動きについて述べました。

今回は、「産油国に絡む戦争は食品価格を押し上げる」として、産油国に絡む戦争勃発を起点とした食品価格高発生までの流れについて述べます。

近年、原油相場は高止まりしています。2022年の短期的な急上昇の後、反落したため「安くなった」と受け止めた関係者は多いようですが、実際のところ、反落は短期で終わり、高止まりが続いています。このおよそ1年半の間、原油相場は80ドルを挟んだ上下10数ドルのレンジ相場で高止まりしています。

今回の中東情勢悪化は、原油相場が長期視点の高止まり状態にある中で起きました。このため、原油高がもたらす負の影響が長引く懸念が強まっています。以下は、原油高がもたらす影響をまとめたものです。

足元、中東情勢が悪化しているだけでなく、ウクライナとロシアの戦争が長期化しています。どちらも、世界屈指の産油国が絡んだ戦争です。こうした戦争は世界的な原油の供給減少懸念を強め、「経済の血液」とも言われる原油の相場に強い上昇圧力をかけます。

原油相場が上昇すると、各種コストが上昇します。輸送、材料、電気、燃料などです。そしてそれらのコストが上昇すると、物価高(インフレ)が進み、それに見合った賃金を払う企業が増えて人件費が上昇します。こうした流れが、スーパーマーケットなどで売られている食品の価格を上昇させます。

日本を襲っている物価高(インフレ)は、景気が良くて需要が旺盛であるために起きているデマンドプル(需要けん引)型だとは言いにくいでしょう。肌感覚で景気が良いと感じる人は多くないはずです。足元の物価高は、長期化している原油高が各種コストを上昇させて起きているコストプッシュ(原材料高)型なのです。

中東情勢のさらなる悪化、ウクライナ・ロシアの戦争のさらなる長期化が見られれば、原油相場は高止まり、場合によってはさらなる高騰もあり得るでしょう。先述の通り、中東情勢が異例ずくめであることを考えれば、今後も原油相場の上振れ、それによるさらなる食品価格高には警戒しなければなりません。

図:産油国に絡む戦争勃発を起点とした食品価格高発生までの流れ
図:産油国に絡む戦争勃発を起点とした食品価格高発生までの流れ

出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。