第3四半期の世界の金需要

著者:近藤 雅世
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 World Gold Council(ワールド・ゴールド・カウンシル、WGC)は第3四半期の世界の金の需給レポートを公開した。

 今年の7月~9月の金価格は6月下旬に米連邦準備制度理事会パウェル議長がそれまで9回利上げされてきた流れを逆転させて利下げを行うと述べた時期であり、米国の金融緩和が意識された。更に8月1日トランプ大統領は、中国からの3000億ドル相当の輸入産品に対して10%の追加関税を9月1日から発動すると述べたことで、米国株価は急落した。

 また、7月の利下げに続き、9月18日のFOMCで一旦無いと思われていた利下げが、CMEのFED Watch利下げ確率が前週の11.8%から96.2%に急上昇するなど、一層の金融緩和になるとの見方が拡大し、金価格は一気に1500ドル台を超えて上昇した。

 金のETFや投資用地金は買われたが、一方で、金が高価格になったことによりインドや中国、トルコ等宝飾品の需要がピタリと止まり、また以前購入した金を売却する人が宝飾店に列をなした。

 こうした動きは、WGCのレポートで金のETF需要が大きく伸び、政府保有金も中国やロシア、トルコ等により購入される一方で、宝飾品やコインの需要が減退したことで示されている。詳細は以下となる。

① 金のETFは過去最高の2855.3トンとなり、前期比+258.2トンの増加となった。これは、2016年第1四半期以来最大の増加量であった。

② 世界の中央銀行の買いは、+156.2トン増だった。前年の第3四半期は過去最高の増加であったため、それに比べると▲38%減だった。1月~9月の間の政府保有金は+547.5トン増となっており、前年同期比+12%増だった。

③ 一方宝飾品需要は前期比▲16%減の460.9トンだった。すべての主要市場で金価格が大幅に上昇し、景気も良くないため宝飾品の購入は落ち込んだ。

④ 投資用の金の地金とコイン需要は半減して150.3トンとなった。金価格が上昇し、投資は様子見となり、以前に購入した金を売却する人が多くなった。

⑤ 金の供給は、+4%増加し1,222.3トンとなった。リサイクルが2016年第1四半期以来の最高レベルまで前期比+10%増加した。鉱山生産は877.8トンで、前年比で横ばいだった。
 

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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