[Vol.2010] 世界分断は長期で金(ゴールド)相場を支える

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.09ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。3,333.80ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年09月限は14,405元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年08月限は522.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1925.55ドル(前日比10.15ドル縮小)、円建てで9,718円(前日比31円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月10日 18時28分時点 6番限)
15,787円/g
白金 6,069円/g
ゴム 315.7円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
NY金先物 月足  単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「世界分断は長期で金(ゴールド)相場を支える」
前回は、「資産形成には『長期視点』のテーマが適切」として、金(ゴールド)の国際相場に関わる七つのテーマ(2025年7月時点)を、確認しました。

今回は、「世界分断は長期で金(ゴールド)相場を支える」として、2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景を、確認します。

筆者は、金(ゴールド)相場は中長期、超長期的に、金(ゴールド)相場は上昇すると、考えています。「中央銀行」の買いが長期的に続くと考えているためです。

そして、中央銀行などが金(ゴールド)を購入する動機となり得る「世界分断」は、世界の民主主義の停滞に拍車がかかることで、さらに深まると考えられます。

V-Dem研究所(スウェーデン)は「自由民主主義指数(Liberal democracy index)」を算出・公表しています。同指数は、行政の抑制と均衡、市民の自由の尊重、法の支配、立法府と司法の独立性など、自由や民主主義に関する多くの要素を考慮しています。

0と1の間で決定し、0に近ければ近いほど、その国は自由度・民主度が低く、1に近ければ近いほど、自由度・民主度が高いことを意味します。

2010年ごろに同指数の低下が始まりました。2010年ごろに世界の民主主義の停滞が始まったといえるでしょう。なぜ、世界の民主主義が停滞し始めた原因は、同年頃から、新しい技術・考え方の「マイナス面」が目立ち始めたことだと考えられます。

人類が本格的に開発を進めてきた技術(SNSやAIなど)や推進してきた考え方(ESGやDEI)は、社会にプラスの影響をもたらしました。しかし、行き過ぎてしまったことで「マイナス面」が目立ち始めています。

SNSはデマ、誹謗(ひぼう)中傷、感情噴出が横行する場となり、AIは人間の思考を奪い、ESGは資源国を窮地に追い込み、DEIはキャンセルカルチャー(好ましくないと考える人や組織を一方的に批判したり、不買運動を行ったりすること)の温床となる側面が強くなってしまいました。

これらのマイナス面はいずれも民主主義を停滞させる原因となり得ます。民主主義の停滞は、世界分断を加速させました。そして世界分断は、戦争の勃発・悪化の一因となったり、資源を持つ非西側諸国に資源の武器化(出し渋り)を促し、さまざまな品目の価格を高騰させて長期的な高インフレの環境をつくり出したりしました。

新技術・考え方は人類の善意から生まれたため、撤回される可能性は低いでしょう。これは、今後も、長期的にこれらのマイナス面が世界の民主主義を停滞させ続け、戦争やインフレを加速し続けることを意味します。

こうした中長期・超長期的な流れは、「中央銀行」「世界分断」起因の上昇圧力を強める要因となり得ます。これらの上昇圧力により、金(ゴールド)相場は、長期上昇トレンドを維持する可能性があります。

図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
図:2010年ごろ以降の世界分断と高インフレ(長期視点)の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。