[Vol.1733] 西側と非西側の分断が原油高の遠因

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。76.28ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,339.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。24年09月限は15,025元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。24年07月限は599.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1310.75ドル(前日比3.95ドル拡大)、円建てで6,684円(前日比6円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(5月24日 18時33分時点 6番限)
11,842円/g
白金 5,158円/g
ゴム 330.5円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 6,300.0円/mmBtu(22年10月限 22年8月5日午前10時35分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル


出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「西側と非西側の分断が原油高の遠因」
前回は、「価格を下げさせない産油国の事情」として、主要原油輸出国の財政収支が均衡するときの原油価格について述べました。

今回は、「西側と非西側の分断が原油高の遠因」として、「ESG」「SNS」が原油価格を高止まりさせた経緯について述べます。

前回述べた通り、原油価格が高止まりしている一因に、OPECプラスが強い動機(感情論を含め)をもって減産に取り組んでいることが挙げられます。以下は、こうした強い動機が生まれた背景を示しています。

西側と非西側の「世界分断」は、減産(原油の出し渋り)のほか、原油の供給減少懸念を強める戦争の原因でもあります。そして、世界分断は、「ESG」と「SNS」の世界的な普及が一因で発生した可能性があります。

SNSは、大きな選挙の際に、たびたび民主主義の根幹を揺るがす側面を見せてきました(2016年の米大統領選、英国のEU(欧州連合)離脱を問う国民投票など。2024年5月の日本の衆議院補欠選挙もその可能性は否定できない)。ESGについては前回述べた通り、石油を一方的に否定し、産油国を傷つけるきっかけになりました。

原油価格を下げたければ、戦争や出し渋り(減産)の一因である世界分断を解消する必要があります。その世界分断を解消するためには、ESGのスピードを緩めたり、SNSの使用頻度を下げたりする必要があります。

これまで莫大(ばくだい)な投資を続けてきたESGを止めたり、人々の生活のインフラと化したSNSを使わないようにしたりすることは、できるのでしょうか。できないと、筆者は考えます。それはつまり、人類がインフレを止める現実的で有効な手段を持ち合わせていないこと、インフレが長期視点で続くことを示唆しているといえます。

図:「ESG」「SNS」が原油価格を高止まりさせた経緯


出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。