週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比1.57ドル高の77.80ドル、ブレント原油は1.61ドル高の80.74ドルとなった。

 前週末は主要な株式相場の動きが落ち着きを取り戻す中で、中国や米国経済への過剰な警戒感が後退したことが支えとなった。

 先週は引き続き中東情勢への警戒感が支援材料となったほか、株価の上昇などリスクオンムードが高まったことが支えとなり堅調な推移となった。一方でイランの報復攻撃が警戒される中でこれといった動きは見られず、過度に高まった緊張感が後退したことは上値を抑えた。週明けはイランやヒズボラによるイスラエル攻撃が近く行われるとの報が相次ぎ、米国が原子力潜水艦ジョージアの中東派遣を発表したことから地政学リスクが意識され堅調な推移となった。翌13日は中国の需要低迷を背景にOPECやIEA月報において石油需要見通しが引き下げられたことが重しとなった。一方でハマスが停戦協議に消極的な姿勢を示していることは支援材料となった模様。翌14日はイランがイスラエルに対して報復攻撃を宣言したものの、その後特段の動きがみられないことから緊張感が後退し軟調な推移となった。また、EIA統計において原油在庫が7週ぶりに増加に転じたことも嫌気された。週末にかけては7月米小売売上高が前月比1.0%と堅調な内容となり、米経済のソフトランディング期待が高まったことから株高進行したことに支えられた。また、ヒズボラ高官がイスラエルへの対応は決定したと述べ、地政学リスクが意識されたことも支援材料となった。

NY原油チャート
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 14日発表の米国CPIの低下を市場が確認できたことから米利下げの織り込みが進みドル安進進行した。先週30ポイントまで上昇し、株式市場・商品市場の大暴落を招いたシカゴ恐怖指数は15ポイントまで低下し、米小売売上高が予想値を上回ったことから株・商品ともに大幅反転する展開となった。ブレント原油は7月高値の87ドル台から8月5日に75ドルまで下げていたが、ドル安や押し目買いの動きから今週前半には82ドル台までの半値戻しを達成した。景気悪化が進む中国の需要減や軟調な経済指標が重しとなり再度80ドルを割り込む動きとなったが、金融市場のリスクオンムードから買われると週末にかけては81ドル前後での推移となった。強気要因としてはドル安、混とんとする中東情勢、弱気要因としては世界最大の原油輸入国である中国の経済不振からの需要減少懸念があげられる。ブレント、WTIとも投機筋の買越し枚数は数年来最低のレベルまで減っているため、中東情勢次第では85ドル程度までの戻りはありそうだが上値は重そうだ。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。