週刊石油展望

著者:児玉 圭太
ブックマーク
 先週末のWTI原油は前週比5.82ドル高の73.67ドル、ブレント原油は5.79ドル高の77.59ドルとなった。

 前週末の海外原油は前日に下落した押し目買いの動きから反発すると、ハリケーン「へリーン」の影響で米メキシコ湾岸での石油生産が20%程度停止していると伝わったことが支えとなり堅調な推移となった。

 先週はイランがイスラエルにミサイル攻撃を行い、地政学リスクの高まりが意識される中で堅調な推移となった。週明けは中国の9月PMIが49.8と節目の50を5カ月連続で割り込み、景気先行き懸念が高まったことは重しとなった一方、イスラエルがヒズボラの指導者であるナスララ師を空爆により殺害し、レバノンへの地上侵攻を開始したことが支えとなると強弱まちまちな展開となった。翌1日はイランがヒズボラに対するイスラエルの攻撃への報復として弾道ミサイルを一斉発射したことから中東情勢の悪化が懸念され続伸した。ミサイルの大半が迎撃され大きな被害は出ていないとみられるものの、イスラエルのネタニヤフ首相が報復を表明している中で戦闘の激化が警戒されている模様。翌2日にかけても中東情勢への懸念から続伸すると、イスラエルがイランの核や石油施設を標的にする可能性があると伝わったことが支援材料となり堅調な推移となった。一方でEIA統計において原油やガソリン在庫が予想に反して増加に転じたことは嫌気された。週末にかけても堅調な推移を引き継ぐと、ホルムズ海峡に面しているペルシャ湾岸の石油施設を攻撃対象とする可能性について懸念が高まっていることが支えとなった。

NY原油チャートみんかぶ
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 今週の原油相場は引き続き堅調な推移が想定されそうか。イランがイスラエルへのミサイル攻撃を行い、報復攻撃が警戒されている。攻撃の規模や被害にもよるが、石油関連施設への攻撃が実施され供給懸念が高まればブレントベースで80ドルまでは吹き上がる展開が想定される。また、イランが戦争には消極的とみられる中で可能性は低そうだが、ペルシャ湾岸のアラブ諸国への攻撃やホルムズ海峡が封鎖されるような事態になればさらに高値を付ける展開が想定されそうだ。一方で被害が小規模にとどまれば、リビア油田の操業が再開されたとの報なども合わせて供給懸念が後退し、買い一巡後には戻りを売られる展開となりそうか。

 

 

商品取引ならOKACHI

このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。