週刊石油展望

著者:児玉 圭太
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 先週末のWTI原油は前週比0.8565,430 ドル安の70.25ドル、ブレント原油は0.39ドル安の74.45ドルとなった。

 前週末の海外原油は、中国のGDPが悪化したことから石油需要の減少懸念が警戒され軟調な推移となった。

 先週はイスラエルが近くイランへの反撃を開始すると伝わったことは支えとなった一方、中国経済の先行き不透明感やドル高進行したことなどが圧迫材料となり往って来いの展開となった。週明けはイスラム組織ヒズボラがイスラエル首相の自宅にドローンによる攻撃を仕掛け、中東の地政学リスクが高まる格好となったことに支えられた。また、中国が政策金利の住宅ローン金利の引き下げを行ったことも支援材料となった。翌22日はイスラエルが攻撃準備を整えており、間もなくイランに反撃する可能性があると伝わったことが支えとなった。イスラエルのガラント国防相は、計画しているイランへの攻撃は戦争の始まりとなり、数カ月間続くだろうと述べている模様。翌23日はEIA統計において原油在庫が予想以上に増加したほか、ガソリン在庫も予想に反して増加に転じたことが嫌気された。また、米大統領選で優勢が伝えられているトランプ氏の政策がインフレ圧力を高める可能性があり、米長期金利が上昇しドル高進行したことも重しとなった。週末にかけては米国イラスラエルにガザ停戦協議の再開を呼びかけ、近く再開される見通しとなったことで中東の地政学リスクが後退し軟調な推移となった。

NY原油チャートみんかぶ
出所:みんかぶ先物WTI原油先物複合チャート

 先週はイスラエルのイラン石油施設に対する攻撃が回避されるとの報道から72ドル近辺まで下げたブレント原油は中東情勢から再度買われ76ドル台まで値を戻したが米国の原油在庫が増加したことから74ドル半ばまで売られた。

 今週はエジプトやアメリカ仲介のもと中東情勢が落ち着きを取り戻す可能性が出てきたことから上値は重くなりそうか。中国の金融緩和=需要の拡大予想で買われている側面はあるが、新車販売における電気自動車の比率が5割を超えている現状では原油需要の拡大は望めないだろう。参考までに貨物車は軽油からLNGへの置き換えが加速している。

 中東情勢が落ち着き始めたら原油は来年度の供給過剰を先取りして、ここ2週間急激に増えたファンドの投げ売りから70ドルを割り込む可能性があるが、中東における和平の道筋が見つからなかった場合は75ドルを挟んだ値動きとなりそう。但し上値では来年度の供給過剰に対する石油会社のヘッジ売りニーズは高い。

 

 

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このコラムの著者

児玉 圭太(コダマ ケイタ )

岡地株式会社
国際法人部主任として国内商社や地場SS等を担当。
需給動向や石油現物価格などをもとに相場分析を行います。静岡出身。