[Vol.1865] バッケン、イーグル・フォードは大きく後退

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。70.00ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,662.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は18,685元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。25年01月限は540.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1710.05ドル(前日比2.35ドル拡大)、円建てで8,235円(前日比17円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(12月4日 17時26分時点 6番限)
12,830円/g
白金 4,595円/g
ゴム 377.4円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,252円/mmBtu(25年3月限 11月19日17時18分時点)

●NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
NY原油先物(期近) 日足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「バッケン、イーグル・フォードは大きく後退」
前回は、「米シェール生産動向を分析する際の留意点」として、米国のシェール生産までの工程(イメージ)と関連するデータを確認しました。

今回は、「バッケン、イーグル・フォードは大きく後退」として、米シェール主要地区の原油生産量の推移を確認します。

以下のグラフは、主要地区ごとの原油生産量の推移を示しています。パーミアンが最も多いことが分かります。同地区だけで米国全体の48%を占めます。2024年10月の生産量は640万バレル/日量でした。この量は、イランやイラク、UAE(アラブ首長国連邦)などの名だたるOPEC(石油輸出国機構)の産油国を上回る規模です。

一方で、減少が目立っている地域もあります。バッケンとイーグル・フォードです。

バッケンとイーグル・フォードの原油生産量は、2014年後半から2016年後半にかけて発生した原油価格の暴落「逆オイルショック」をきっかけに減少しました。また、2020年の新型コロナショック時にも、大きく減少しました。原油価格急落が、多数の生産者の資金繰りを悪化させ、生産量減少のきっかけとなりました。

近年、これらの地区の原油生産量は、新型コロナショック前の水準を下回ったままです。これらの地区の掘削済井戸数は、長期低迷が続いています。掘削済井戸数は、リグ(井戸を掘る機械。原油を生産する機械ではない)を稼働させて掘削し終えた井戸の数です。

掘削済井戸数の長期低迷は、当該地域が長期的にシェールオイルの主要生産地と見なされなくなったことを示唆しています。かつて、イーグル・フォードではひと月当たり400基、バッケンでは200基を超える井戸が掘られていました。しかし今は100基を下回る状況が続いています。まるで「さびれたシェール地区」です。

一度廃れた地域を以前のような、活発な開発・生産が行われていた状態に戻すためには、相当の時間とお金と労力が必要です。「掘りまくれ!」の号令はかかっているものの、すぐの復活、つまりすぐの生産増加は難しいかもしれません。

図:米シェール主要地区の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量
図:米シェール主要地区の原油生産量の推移 単位:百万バレル/日量
出所:EIA(米エネルギー情報局)のデータを基に筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。