[Vol.1919] OPECプラスの減産の動機に「脱炭素」あり

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反発。米主要株価指数の反発などで。69.26ドル/バレル近辺で推移。

金反落。米10年債利回りの反発などで。2,900.40ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,685元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年04月限は537.2元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1922.7ドル(前日比31.30ドル縮小)、円建てで9,458円(前日比26円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(2月27日 18時37分時点 6番限)
14,000円/g
白金 4,542円/g
ゴム 363.2円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,161円/mmBtu(25年5月限 2月25日17時16分時点)

●NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「OPECプラスの減産の動機に『脱炭素』あり」
前回は、「OPECプラスはしたたかに高値維持を画策中」として、OPECプラスの減産(イメージ)を確認しました。

今回は、「OPECプラスの減産の動機に『脱炭素』あり」として、2010年ごろ以降の世界分裂発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景を確認します。

2010年ごろから、世界で「脱炭素」が進行している様子を見て、OPECプラスは何を思っていたでしょうか。

これまで長きにわたり、西側のぜいたくを実現するためにずっと協力してきたのに、西側が買わないのであれば、買ってくれる非西側に売ろう、不要と言われたのだから価格をいくら高くしても文句は言われないのではないか、同じ境遇の産油国同士で結束を強めよう、などと考えていた可能性は、否定できません。

西側と非西側産油国の「脱炭素」に対する考え方の相違は、分断を生みました。分断が深まり始めた2010年ごろ以降、その流れに倣い、OPECプラスの自由民主主義指数(その国の自由度・民主度を示す指数。スウェーデンのV-Dem研究所が試算)が頭打ちになりました。自由度・民主度の低下を示す同指数が頭打ちとなったことは、OPECプラスの考え方が、西側の考え方に近づく動きが停止したことを意味します。

OPECの資料によると、OPECプラスが協調減産を始めた2017年、OPECの要人が米国に行ってエネルギー関連の要人と面談をしたり(米エネルギー情報局や米商品先物取引員会を訪問した記録あり)、西側諸国が起源であるIEA(国際エネルギー機関)の要人と意見交換をしたりしていました。

OPECの要人が、ハリケーンが襲来した米国南部の人々に哀悼の意を示した記録もあります。しかし、このように、OPECプラスの自由民主主義指数が上昇し、考え方が西側に近づく兆しが見られた期間は、ほんの一瞬でした。残念なことに同指数は、2018年をピークに低下の一途をたどり始めました。

以下の図は、2010年ごろ以降に目立ち始めた世界分裂の一因と影響を示しています。行き過ぎた環境配慮が、西側と非西側の産油国(≒OPECプラス)との関係に亀裂を入れ、それが世界分裂や、「資源国の出し渋り」につながったと、筆者は考えています。

現在行われている原油の減産は、2010年ごろから目立ち始めた「行き過ぎた環境配慮」がきっかけだった可能性があります。OPECプラスが原油の減産に躍起になっているのは、ただ単に目の前の原油相場を支えるためだけではないのだと、考えられます。

心情的なことがきっかけで起きた出来事は、解消するまでに多くの労力と時間を要します。この意味では、OPECプラスの減産が2026年までとは言わず、さらに長い期間にわたって続く可能性もあります。

図:2010年ごろ以降の世界分裂発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
図:2010年ごろ以降の世界分裂発生とコモディティ(国際商品)価格上昇の背景
出所:筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。