[Vol.1921] コメ価格、急騰中、1年間で1.6倍超に

著者:吉田 哲
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原油反落。米主要株価指数の反落などで。69.42ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。2,877.31ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。25年05月限は17,755元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。25年04月限は538.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで1922.11ドル(前日比11.51ドル拡大)、円建てで9,470円(前日比8円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(3月3日 18時30分時点 6番限)
13,969円/g
白金 4,499円/g
ゴム 362.3円/kg
とうもろこし (まだ出来ず)
LNG 2,119円/mmBtu(25年5月限 2月28日18時23分時点)

●NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
NY原油先物 月足  単位:ドル/バレル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「コメ価格、急騰中、1年間で1.6倍超に」
前回は、「トランプ2.0下で予想される日本での事象」として、日本の原油および天然ガス輸入単価とWTI原油価格を確認しました。

今回は、「コメ価格、急騰中、1年間で1.6倍超に」として、国内産コシヒカリの小売価格(都道府県庁所在地平均)税込を確認します。

日本国内のコメの小売価格が急上昇しています。以下は、国内産のコシヒカリの小売価格(都道府県庁所在地の平均。総務省の統計より試算)です。足元、5キロあたりおよそ3,893円です。この水準は1年前の2024年1月に比べるとおよそ1.6倍です。

急上昇は昨年夏に始まりました。背景は、図中に示したとおり、断続的に大きな上昇圧力が発生したためです。昨年夏ごろは、前年度の天候不順による在庫不足が目立ちました。秋以降、収穫の時期にも関わらず上昇した背景には、夏ごろの在庫不足を受けて需要の前借り(先々の需要が前倒しで訪れること)が起き、需給にひっ迫感が生じたことが挙げられます。

そして、この数か月間の上昇については、「消えたコメ」と報じられているとおり、流通経路の一部で停滞が生じている思惑が大きな影響を及ぼしていると言えます。こうした断続的な強い上昇圧力が継続していることが、コメの小売価格の急騰の要因であると、考えられます。

一方、国内の商品先物市場の価格を見ると、小売価格ほど、上昇していません。小売価格は特定の品目の価格、先物価格は多数の品種をかけあわせた価格と、条件は異なりますが、日本国内のコメの価格という点では共通しています。2月中旬になされたコメの備蓄放出報道がきっかけで出来高が急増しました。

先物市場では、値下がりを見越した「売り」の取引が可能であるため、備蓄放出→需給緩む→価格下落という連想で、売りのポジションを作った投資家や、コメの実物を持っている業者が在庫の発生が予想される評価損を埋めるために売りのポジションを作った可能性があります。こうした売りの注文と小売価格の急騰を追うように増えた買い注文が見合い、出来高が急増したと言えます。

ある意味、急騰し続ける小売よりも、売りと買いが見合う先物は冷静だと言えます。その意味では、足元の小売価格は、強すぎる思惑が主導する尋常ならざる状態にあると言えます。

図:国内産コシヒカリの小売価格(都道府県庁所在地平均)税込 円/5キロ
図:国内産コシヒカリの小売価格(都道府県庁所在地平均)税込 円/5キロ
出所:総務省統計局のデータをもとに筆者試算

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。