[Vol.2249] 民主主義後退とサッカーワールドカップ

著者:吉田 哲
ブックマーク
原油反落。米主要株価指数の反落などで。68.67ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドル指数の反発などで。4,189.20ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。26年09月限は16,910元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年08月限は438.6元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2518.75ドル(前日比21.15ドル拡大)、円建てで13,865円(前日比13円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月6日 19時11分時点 6番限)
22,150円/g
白金 8,285円/g
ゴム 418.5円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
NY金先物(期近) 月足 単位:ドル/トロイオンス
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「民主主義後退とサッカーワールドカップ」
前回は、「『複数要因の同時進行』が分析のコツ」と題して、NY原油先物価格(中心限月 日次平均)について、述べました。

今回は、「民主主義後退とサッカーワールドカップ」と題して、世界の自由民主主義指数(人口加重平均)について、述べます。

2026年のサッカーワールドカップは、48カ国が参加する史上最大規模の大会です。本レポートでは、開催国や参加国、スポンサー企業などを自由民主主義指数の視点から分析し、世界の分断や価値観の多様化が進む現状を再確認します。その上で、世界構造の変化が中央銀行の金保有動向、引いては金相場の長期視点の動向にどのような影響を与るのかを考察します。

世界各国の人口と自由民主主義指数(2024年)を確認すると、世界の人口の約77%が自由民主主義指数0.4以下の国々で暮らしている一方、0.6以上の民主主義国に住む人口は約17%にとどまっています。

日本で暮らしていると、世界は民主主義と自由を求めて動いているように感じてしまいますが、人口という視点で見ると、実際には民主主義が十分に機能していない国や地域で暮らす人々の方が圧倒的に多いことが分かります。

世界経済や国際政治を考える上では、「どの国が豊かか」だけでなく、「どれだけの人々がどのような政治体制の下で生活しているか」を把握することが重要です。

以下の図は、自由民主主義指数(世界平均)の長期推移です。第二次世界大戦後や冷戦終結後は民主化が進み、同指数は大きく上昇しました。しかし、その流れは2010年ごろを境に転換し、現在まで低下傾向が続いています。

2025年の指数は0.273となり、冷戦期に近い水準まで低下しています。民主化が世界全体の共通目標として進展した時代から、価値観や政治体制が多様化する時代へ移行したことを、この図は示していると言えます。

この2010年というタイミングは、サッカーワールドカップとの関係でも象徴的です。2010年大会は南アフリカで初めて開催され、その後、2014年はブラジル、2018年はロシア、2022年はカタール、そして2026年は米国・カナダ・メキシコの3か国共催となりました。2030年はポルトガルとスペインという欧州の西、そして地中海を挟んだ北アフリカのモロッコを中心に開催されます。

開催地の広がりは、サッカー人気の世界的拡大を示すだけではありません。世界経済の重心が新興国へ移りはじめ、多様な政治・経済・文化を持つ国々が国際社会で存在感を高めてきた流れとも重なります。

2026年ワールドカップは、参加国数が48に拡大し、史上最大規模で開催されています。これはまさに、世界の多様性を象徴するイベントである一方、現在の世界が民主主義の拡大一辺倒ではなく、多様な価値観が併存する時代に入ったことも映し出しています。

一方で、この多様化は、世界の安定性という観点では新たな課題も生み出しています。価値観や政治体制が多様になることで、国家間の対立や経済安全保障への関心が高まり、市場参加者は従来以上にリスクを意識するようになりました。

今後数回に渡り、この「世界の多様化」という長期的な潮流が、金(ゴールド)市場の環境にどのような影響を与えるのかを、ワールドカップを切り口として考えていきます。

図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
図:世界の自由民主主義指数(人口加重平均)
出所:V-Dem研究所のデータおよび各種資料をもとに筆者作成

 

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。