[Vol.2259] スーパーエルニーニョ=食品急騰ではない

著者:吉田 哲
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原油反発。米主要株価指数の反発などで。82.98ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドル指数の反落などで。4,066.30ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年09月限は16,815元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反落。26年09月限は531.0元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2431.45ドル(前日比19.55ドル拡大)、円建てで13,437円(前日比81円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月21日 18時24分時点 6番限)
21,772円/g
白金 8,335円/g
ゴム 417.5円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 月足 単位:ドル/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 月足 単位:ドル/ブッシェル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「スーパーエルニーニョ=食品急騰ではない」
前回は、「今後、金(ゴールド)相場はどうなるの?」と題して、ドル建て金(ゴールド)価格の変動イメージについて、述べました。

今回は、「スーパーエルニーニョ=食品急騰ではない」と題して、食料価格指数(世界全体)とスーパーエルニーニョ発生について、述べます。

エルニーニョ現象とラニーニャ現象が日本の気候に与える一般的な影響を確認します。エルニーニョ現象とは、南米沖のエルニーニョ監視海域の海面水温が平年より高くなる現象です。反対に平年より低くなる現象がラニーニャ現象です。

何らかの要因で東風(貿易風)が弱くなると、西太平洋の温かい海水がエルニーニョ監視海域に流入してエルニーニョ現象が発生するといわれています。逆に強くなると、エルニーニョ監視海域の海面水温が低下してラニーニャ現象が発生するといわれています。

エルニーニョ現象が発生すると、日本付近では、西太平洋熱帯域の海面水温が低下して冷夏になったり(積乱雲の活動が鈍る)、冬型の気圧配置が弱まって暖冬になったりしやすいといわれています。

ラニーニャ現象が発生すると同帯域の海面水温が上昇して暑夏になったり(積乱雲の活動が活発)、冬型の気圧配置が強まって寒冬になったりしやすいといわれています。

しかし、今年は従来の経験則が通じない可能性があります。現在、エルニーニョ監視海域では、平年比で3度前後高い「スーパーエルニーニョ」が予想されています。また、西太平洋熱帯域の海面水温が低下せず、太平洋高気圧が張り出しやすくなるため、暑夏となるとの予報も出ています。

西太平洋熱帯域とエルニーニョ監視海域における6月時点の海面水温の長期推移を確認します。

西太平洋熱帯域の海面水温に注目すると、長期的な上昇傾向を確認することができます。1950年代から1980年代にかけては29度を下回る年も珍しくありませんでしたが、近年は30度前後を維持しながら、緩やかに水準を切り上げています。

エルニーニョ監視海域の海面水温も上昇傾向にあり、2026年の値は過去77年間で最高水準に達しています(速報値ベース)。今回のエルニーニョが極めて大きい影響力を持つ「スーパーエルニーニョ」に発展する可能性があることがわかります。

ここで注目したいことは、エルニーニョ監視海域の海面水温が極端に高いことと、西太平洋の同水温が十分に低下しないことが同時に起きていることです。従来のエルニーニョでは、エルニーニョ監視海域が温まる一方で、西太平洋は相対的に冷やされる傾向がありました。

近年は、海洋全体の温暖化が進んでいるためか、西太平洋の海面水温は上昇傾向にあります。その結果、エルニーニョ現象が発生しても、西太平洋側の積乱雲活動や太平洋高気圧の勢いが完全には失われなくなっていると考えられます。

エルニーニョ監視海域の異常な高温は「イベント」、西太平洋の長期的な海面水温の上昇は「土台」と言ってもよいかもしれません。

近年の日本の気候は、この二つの要因が重なり合うことで、従来の経験則だけでは説明しきれない局面を迎える可能性があります。一つの現象だけで判断するのではなく、複数のテーマを同時に見る視点が、これまで以上に重要になっているといえそうです。

エルニーニョ監視海域の海面水温と基準値との差(3カ月平均)の推移を確認します。これは、エルニーニョ現象の規模を示す代表的な指標であり、一般的に海面水温が平年より0.5度以上高い状態が継続するとエルニーニョ現象と判定されます。

過去を振り返ると、1982~83年、1997~98年、2015~16年に特に大規模なエルニーニョが発生しました。これらは「スーパーエルニーニョ」と呼ばれ、いずれも海面水温が平年を3度前後上回る、大変に大きな事象でした。

そして足元では、2026年の値が再び同水準に接近しつつあります。今後さらに上昇し、過去のスーパーエルニーニョに匹敵する事態に発展する可能性があるといわれています。

以下の図は、世界全体の食料価格の大局観を示す食料価格指数の推移と、スーパーエルニーニョが発生したタイミングを示した図です。

1982~83年、1997~98年、2015~16年の三度のスーパーエルニーニョ発生時は、いずれも世界各地で異常気象が猛威を振るいました。東南アジアやオーストラリアでは干ばつ、南米では豪雨が発生し、農作物の生産や物流に影響を及ぼしたといわれています。

しかし、図が示すとおり、スーパーエルニーニョの発生が世界全体の食料価格を急騰させたわけではありません。同指数は、1982~83年と2015~16年に小規模な反発にとどまり、1997~98年は下落しました。

このことは、世界の食料価格が気象要因だけで決まるわけではないことを示しています。人口動態、原油や肥料の価格動向、新しい需要の動向、食文化の変化、生産国の民主主義の状態など、多くの要因が同時に作用し、その上で価格が決まっているのです。

このように考えれば、スーパーエルニーニョは世界の食料価格を決定する「主役」ではなく、「一要因」だと言えます。

足元では、2026年に再びスーパーエルニーニョが発生する可能性が指摘されています。しかし、それだけを理由に食料価格の急騰を予想することは適切ではありません。重要なことは、複数のテーマを同時に見る考え方です。

図:食料価格指数(世界全体)とスーパーエルニーニョ発生
図:食料価格指数(世界全体)とスーパーエルニーニョ発生
出所:FAOのデータおよび各種資料を基に筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。