[Vol.2262] スーパーエルニーニョは大局観を養う契機

著者:吉田 哲
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原油反落。中東情勢の鎮静化期待などで。89.81ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの反落などで。4,061.65ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反落。26年09月限は16,765元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。26年09月限は589.4元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで2448.95ドル(前日比7.55ドル拡大)、円建てで13,581円(前日比56円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

国内市場は以下のとおり。(7月24日 19時32分時点 6番限)
21,892円/g
白金 8,311円/g
ゴム 418.0円/kg
LNG 1,799円/mmBtu(25年8月限 5月27日15時39分時点)

●シカゴトウモロコシ先物(期近) 月足 単位:ドル/ブッシェル
シカゴトウモロコシ先物(期近) 月足 単位:ドル/ブッシェル
出所:MarketSpeedⅡより筆者作成

●本日のグラフ「スーパーエルニーニョは大局観を養う契機」
前回は、「人口増加・食料需要増加を支えた『単収』」と題して、世界三大穀物の生産量と収穫面積の推移(世界全体)について、述べました。

今回は、「スーパーエルニーニョは大局観を養う契機」と題して、穀物主要生産国の自由民主主義指数の推移について、述べます。

以下の図は、世界の主要な穀物生産国における自由民主主義指数の推移を示しています。同指数は、V-Dem研究所が試算・公表する、自由度・民主度の目安です。法の支配、選挙制度、言論の自由度など、関連するさまざまなデータを基に、計算されています。

穀物市場を考える際、多くの市場関係者は気象や需要の動向に注目します。しかし近年は、それだけでは十分ではなくなっています。食料供給そのものが、政治体制や国際情勢の影響を強く受ける時代に入りつつあるためです。


図が示すとおり、オーストラリア、カナダ、米国などの主要輸出国では高い水準の民主主義が維持されています。一方、中国やロシアでは低い水準が続いており、インドやウクライナ、アルゼンチンなどでも低下傾向が確認できます。そして世界平均も、2010年ごろを境に低下基調に転じています。

2010年ごろは、世界の政治・社会構造が大きく変化し始めた時期でもありました。SNSの普及、AI技術の発展、経済格差の拡大などを背景に、世界各地で分断が深化しました。その結果、食料やエネルギーなどの資源を外交や安全保障の手段(武器)として利用する動きが強まりました。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻は、その象徴的な出来事でした。小麦輸出大国である両国の供給不安は、世界の穀物価格を急騰させました。近年では輸出規制や関税措置も目立っており、「必要な時に必要な量を購入できる」という民主的で自由な貿易の前提が揺らぎ始めています。

消費者が購入する食品に関わる主要な国際商品(コモディティ)の価格推移を確認します。カカオ豆やコーヒー豆、砂糖、小麦、トウモロコシ、さらには原油まで、多くの商品価格は長期的に高い水準で推移しています。

短期的な変動はありますが、自由民主主義指数の世界平均が低下し始めた2010年ごろ以降、長期視点で価格水準が切り上がっています。

背景には、世界人口増加(食用・畜産用需要増)、原油価格長期上昇(輸送・肥料コスト増)、異常気象頻発懸念(供給減少リスク増)だけでなく、食文化欧米化(一人あたり食料需要増)、農産物需要多様化(脱炭素向け需要増)、技術依存傾向強(供給減少リスク増)、資源武器利用増(供給減少リスク増)、投資マネー増(価格振幅増)などが同時進行していることが挙げられます。

食料価格の短期的な値動きは異常気象などの個別の「イベント」によって左右されます。しかし長期的な価格水準を決めているのは、こうした構造変化が関わる「土台」だと言えます。

食料価格を考える際には、「今年の天候はどうか」という視点だけでなく、「世界はどの方向へ向かっているのか」という大局観を持つことが、これまで以上に重要になっているといえそうです。今回のスーパーエルニーニョの件をきっかけに、大局観への意識を強めることが、求められているのだと思います。

図:穀物主要生産国の自由民主主義指数の推移
図:穀物主要生産国の自由民主主義指数の推移
出所:V-Dem研究所のデータを基に筆者作成

 

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このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。超就職氷河期の2000年に、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして活動を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。「過去の常識にとらわれない解説」をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどで幅広く、情報発信を行っている。大学生と高校生の娘とのコミュニケーションの一部を、活動の幅を広げる要素として認識。キャリア形成のための、学びの場の模索も欠かさない。