50ドル攻防戦 原油相場見通し

著者:菊川 弘之
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 NY原油(3月限)は、続落。一時49.91ドルを付け、昨年1月以来の50ドル割れとなった。新型肺炎拡大を受けて、中国の原油需要が減っていると伝わり、売りが優勢になった。国営石油会社の中国石油化工集団(シノペック)は、今月の処理能力を日量で約60万バレル削減すると発表。独立系の石油企業が集中する中国の山東省でも、石油製品の減産が続く見通し。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、多くの中国企業は営業再開を当面見合わせることから景気減速が加速し、石油需要は減少見通し。中国は世界最大の原油の輸入国で、石油消費量は世界最大の米国に次ぐ。中国の石油需要は日量1000万バレル超の規模で、世界全体の約1割を占める。

 NY原油と相関の高いNYダウは、中国人民銀行(中央銀行)が春節休場明けの3日、金融市場に資金を供給し、中国経済に対する過度な懸念が和らいだことから自律反発狙いの買いが入ったことで、終値ベースでNY原油は50ドルを維持した。中国人民銀行は、公開市場操作で1兆2000億元(約19兆円)を市場に供給した。

 同じく原油相場と相関の高いISM製造業景況感指数が50.9と、好不況の境目とされる50を半年ぶりに上回った事も一因。ただし、今回のISMは、新型肺炎の影響を受ける前の数字で、次回以降、落ち込む可能性は残る。



このコラムの著者

菊川 弘之(キクカワ ヒロユキ)

日産証券インベストメント株式会社 チーフ・ストラテジスト / 国際テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe®)。
GelberGroup社、FutureTruth社などでのトレーニーを経験後、商品投資顧問会社でのディーリング部長等経て現職。
日経CNBC、BloombergTV、ストックボイス、ラジオ日経など多数のメディアに出演の他、日経新聞、時事通信などに連載、寄稿中。
また、中国、台湾、シンガポールなどで、現地取引所主催・共催セミナーの招待講師も務める。

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