新型肺炎が、米シェール生産を鈍化させる!?

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。46.62ドル/バレル近辺で推移。

金反発。ドルインデックスの反落などで。1,602.35ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は10,990元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年05月限は367.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで720.4ドル(前日終値比18.4ドル拡大)、円建てで2,502円(前日終値比9円縮小)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(3月2日 17時16分頃 先限)
 5,574円/g 白金 3,072円/g 原油 34,230円/kl
ゴム 175.5円/kg とうもろこし 23,440円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「新型肺炎が、米シェール生産を鈍化させる!?」

今回は「新型肺炎が、米シェール生産を鈍化させる!?」として、これまでの原油価格と米シェール主要地区の開発関連指標の推移を確認します。

長期的な視点で言えば、WTI原油価格が45ドル程度で推移する期間が長くなればなるほど、新規に掘削される井戸や、仕上げ(掘削済の井戸に対して原油生産を開始するために行う最終的な準備)が行われる井戸の数が減少し、米国のシェール主要地区の原油生産量が減少しやすくなると考えられます。

以下のグラフは、米国のシェール主要地区における、開発工程の活況度合いを示す2つの指標(掘削済井戸数と仕上げ済井戸数)と、原油価格の推移を示したものです。

今年に入り、原油価格が大きく下落しているため、足元の2つの指標は減少傾向にあります。

逆オイルショック(2014年半ばから2016年末ごろまでの原油相場の急落・低迷)の際に、一時、原油相場は30ドルを割りました。

その後の原油相場の反発の際、原油相場の急落と同時に減少していたシェール開発関連指標が増加し始めました。シェール開発関連指標が増加し始めた時の原油価格は、およそ45ドルです。

45ドルを回復したことで、シェール業者の採算が合うようになり開発が活性化した、逆を言えば、45ドル近辺を下回ると開発が低迷すると言えます。

つまり、45ドル近辺が、近年の米シェール業者の採算ラインと言えると思います。(いずれも月間平均価格)

今月入り、WTI原油価格は採算ラインと見られる水準ギリギリで推移しているわけですが、この水準で原油価格が推移する期間が長くなればなるほど、比較的高コストの業者は撤退を余儀なくされる可能性があります。

開発の低迷は、長きに渡ってOPECプラスの減産の効果を相殺し続けてきた米シェール主要地区の原油生産量を減少させる、つまり、長期的な視点で、原油相場にプラスの効果をもたらす要因になるとみられます。

図:米シェール主要地区の開発指標と原油価格の推移
米シェール主要地区の開発指標と原油価格の推移

出所:EIA(米エネルギー省)およびCMEのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。