迫るOPEC総会。減産拡大でも需給が大きく引き締まらない懸念

著者:吉田 哲
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原油(WTI先物)反発。主要株価指数の反発などで。47.76ドル/バレル近辺で推移。

金反発。米10年債利回りの低下などで。1,596.85ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年05月限は11,025元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年05月限は376.5元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで726.2ドル(前日比9.2ドル縮小)、円建てで2,504円(前日比2円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(3月3日 17時26分頃 先限)
 5,531円/g 白金 3,027円/g 原油 34,630円/kl
ゴム 172.1円/kg とうもろこし 23,610円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「迫るOPEC総会。減産拡大でも需給が大きく引き締まらない懸念」

今回は「迫るOPEC総会。減産拡大でも需給が大きく引き締まらない懸念」として、今月に入り、海外主要通信社が公表した、2月のOPEC各国の原油生産量と、それをもとに計算された減産順守率をもとに、強化後の減産をシミュレーションします。

今週5日(木)に第178回OPEC総会、6日(金)第8回OPEC・非OPEC閣僚会議が予定されています。

海外主要通信社は、2月のOPECの減産順守率を128%としました。

12月の総会を受けて強化された減産の初月となった1月は133%だったため、2月は減産に参加するOPEC加盟国10カ国の原油生産量が増加したことがわかります。

以下の図は、128%だった減産順守率をもとに計算した2月の原油生産量③、そして減産実施時の生産上限②との差④、想定される削減量⑤、想定される削減を行った時の生産量の上限⑥を示したものです。

⑤の想定される追加削減量である日量40万バレルは、これまでOPECと非OPECプラスの削減量の配分がおよそ7:3だったことをもとに、OPECプラスが全体で日量50万から60万バレルの追加削減を行うことを想定して試算したものです。

OPECは2月、予定よりも32万バレル多く削減したとみられます。このため、仮に今週の総会で追加で40万バレルの削減を決定しても、実際は、2月に比べて8万バレル程度、多く削減するだけで減産順守を達成することができます。

追加減産、減産強化、などの強い前向きな言葉とは裏腹に、実態としてはほぼ現状追認の追加減産であり、世界の需給バランスを大きく改善することは難しいかもしれません。

さらに、新型肺炎の影響で世界の石油の消費量が減少した場合、OPECプラスが消極的な減産を行えば、なおのこと、過剰在庫が積み上がる可能性もあります。

現状追認ではない、さらに踏み込んだ、削減量の拡大が望まれます。

図:余剰削減分を用いた現状追認型の減産強化のイメージ
余剰削減分を用いた現状追認型の減産強化のイメージ

出所:海外主要通信社のデータおよびOPECの資料をもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。