コロナウイルスその9 金価格下落の要因/予想がつかない状況

著者:近藤 雅世
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 株式会社コモディティーインテリジェンス発行の『週刊ゴールド』(3月24日号)では、NY金価格が下落した理由をWorld Gold Councilが解説している内容を要約した。要点は3点ある。

① 世界の投資家が株価や通貨下落による損失の穴埋めや証拠金不足のために年初から上昇していた金の利益を出ししたためという。3月1日だけでOTCなどの金取引は2,600億ドル(約28兆6千億円)にのぼったという。またファンドはNY金の過去最大のネット買い残から3週連続で売っており、ネット買い残の減少と共に価格が下落している。

② 有事のドル買いとなっており、各国通貨は売られドルが買われている。そのためドル建てのNY金価格は下落したが、他の通貨、ことに欧州通貨建て金価格は下がっていない。

③ 2008年9月にリーマンショックがあった時、世界の株価は急落し、金価格は上昇した。その後GMの倒産や、アラブの春、アイルランドから始まりギリシャやキプロスで終わった欧州債務危機等を経て2011年9月に史上最高値1923.7ドルを付けたがその間たくさんの押し目を作りながら上昇している。

 その前例通りかどうかわからないが、昨日のNY金価格は反発している。現在の状況を端的に言うなら、予想のつかない状況である。原油にしてもIEA(国際エネルギー機関)もEIA(米エネルギー情報局)もOPEC(石油輸出国機構)も、石油需要が減少し在庫が増加すると述べているが、彼らが示す数値が正しいとは思えない。コロナウイルスの進展度合いによってはもっとひどいことになる可能性があるし、ワクチンが開発され終焉する可能性もかなり近い将来であろう。

 SNSの発達した今日では誰もが情報の発信者となり、ああでもないこうでもないとたくさんの情報が乱れ飛んでいる。その真偽のほどは定かでない。W.D.ギャンは取引所の靴磨きの少年が「おじさん、あの株は絶対上がるよ」と言った時に、株式投資から撤退したという。今はそういう時期ではなかろうか。
 

 

 

 

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。
アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。
2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。
毎週月曜日週刊ゴールド、火曜日週刊経済指標、水曜日週刊穀物、木曜日週刊原油、金曜日週刊テクニカル分析と週間展望、月二回のコメを執筆。
毎週月曜日夜8時YouTubeの「Gold TV Net」で金と原油について動画で解説中(月一回は小針秀夫氏)。
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