長期減少傾向が続く、減産免除国の原油生産量

著者:吉田 哲
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原油反発。主要株価指数の反発などで。38.27ドル/バレル近辺で推移。

金反落。ドルインデックスの反発などで。1,707.45ドル/トロイオンス近辺で推移。

上海ゴム(上海期貨交易所)反発。20年09月限は10,645元/トン付近で推移。

上海原油(上海国際能源取引中心)反発。20年07月限は284.9元/バレル付近で推移。

金・プラチナの価格差、ドル建てで855.15ドル(前日比7.25ドル縮小)、円建てで3,081円(前日比12円拡大)。価格の関係はともに金>プラチナ。

東京市場は以下のとおり。(6月5日 19時11分頃 先限)
 5,989円/g 白金 2,908円/g 原油 28,680円/kl
ゴム 162.4円/kg とうもろこし 23,030円/t

●東京原油 1時間足 (単位:円/キロリットル)
東京原油 1時間足

出所:楽天証券の取引ツール「マーケットスピードCX」より

●本日のグラフ「長期減少傾向が続く、減産免除国の原油生産量」

今回は「長期減少傾向が続く、減産免除国の原油生産量」として、今週、海外メディアが公表した5月のOPEC加盟国の原油生産量から、減産に参加していない3カ国の原油生産量の合計について書きます。

減産に参加していない国とは、減産免除国のことで、現在は、イラン、リビア、ベネズエラの3カ国を指します。

自国の政情不安などで、正常な生産活動が行えない場合、あるいは、正常な生産が行えるようになって間もない場合、減産免除となる場合があります。

現在、イランとベネズエラは、米国の制裁下にあるとみられ、リビアは政情不安で、生産量が急減しています。

このような国々が、仮に減産に参加して、生産量が減少したとしても、それは、人為的な生産調整の意味の、いわゆる減産によるものではなく、自国の政情不安による生産減少です。

自国都合の生産減少は、減産が順守できているかを、正しく評価することを難しくします。

これらの3カ国が減産免除となっているのは、減産をしなくてもよい、許されている、のではなく、減産に参加させるとデメリットが発生するため、だと考えらえれます。

2017年1月から2018年12月まで、イランは、生産量の上限があてがわれた、れっきとした減産参加国でした。

しかし、2018年5月ごろから米国が制裁を再開したことによって、イランの原油生産量は、減産実施と別の理由で、減少しはじめました。

2018年12月の減産ルールの変更の際に、イランが減産免除国になったのは、米国の制裁が、大きな理由だったと、考えられます。

OPEC加盟国であるため“OPECの原油生産量”というデータには、減産免除国の原油生産量が含まれます。

このため、減産免除国の原油生産量の減少は、OPECの原油生産量の減少に大きく“貢献”し、OPECの減産を上手くいっているように見せる、誤解を生む、要因になっている点に、注意が必要です。

図:減産に参加していないOPEC内3カ国の原油生産量 単位:万バレル/日量
減産に参加していないOPEC内3カ国の原油生産量

出所:海外メディアのデータをもとに筆者作成

このコラムの著者

吉田 哲(ヨシダ サトル)

楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト
1977年生まれ。2000年、新卒で商品先物会社に入社。2007年よりネット専業の商品先物会社でコモディティアナリストとして情報配信を開始。2014年7月に楽天証券に入社。2015年2月より現職。“過去の常識にとらわれない解説”をモットーとし、テレビ、新聞、雑誌などで幅広く、情報配信を行っている。2020年10月、生涯学習を体現すべく、慶應義塾大学文学部第1類(通信教育課程)に入学。