3000億円の偽の金塊融資事件

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著者:近藤 雅世
 昨日の週刊ゴールドに買いたことであるが、湖北省の中国最大といわれていた宝石商が、借入の担保としていた金塊82トンが銅地金に金メッキをした偽物だったことが判明したという。この企業の名前はWuhan Kingold Jewelry Inc.、なんと、ニューヨークのナスダックに上場している企業で、この金地金を担保とした借入金額は、200億元(約3000億円)とそのスケールの雄大さに二度びっくりである。

 その資金の一部で、燃料電池を作る国有企業の自動車部品企業を買収し、湖北省から民営化のモデルケースとして表彰もされていたという。

 日本では金塊を担保に入れることはまずないと思われるが、金塊の場合は鉛などを中に入れている可能性を否定できないため、金塊の買取業者としては、溶かし直して調べることが当たり前であり、このケースの中国の金融業者もチェックしたという。ただ、82トンもあると、全量を溶かすことはなかったものと推測される。本物の金塊をうまく差し出せば、残りは偽物であってもわからない。筆者の経験で言えばフェロシリコンを中国から買う時によく騙された。広東省の港まで出向いてフェロシリコンが積んであるフレコンバッグの山をよじ登って適当なところを切り裂いて中身を見ると銀色に光った本物が出てくる。納得して日本に送ると、ユーザーから近藤さん、中身は石ころでしたよと電話がかかり青くなることがしばしばあった。

 相手が騙そうとすれば、騙されないようにするのはとても難しい。余程注意していても、人を騙すことは恐らく簡単であろう。若い頃日本ではアルミスクラップの取引で騙されたことがある。この業者は真面目な取引をなんと5年も続け、彼の持ち込むスクラップは間違いないと信用を得た上で、恐らく10社近い商社に一つの商品を販売し、各社から商品代金を得てどこかに逃げた。各社は自分のところに受け渡された物だと信じていたが、現物は一つしかなかったと言う次第。その後この人物を見た人はいないが、彼は長年にわたってこの詐欺で数十億円を懐にするために画策していたものと思われる。ただ、上記の金塊に比べればかわいいものである。

 フィリッピンのマルコス大統領が保有していた金塊があるという人が訪ねて来たこともある。この時は、「それは凄いですね、是非見たいから現物をこの机の上に並べてください」と述べたら、ひとしきりああでもないこうでもないと話を聞かされて、その人物は帰って行った。物を見ずに支払うのは駄目である。たとえよく知っている知人でも上記の例があるから支払ってはならない。

このコラムの著者

近藤 雅世(コンドウ マサヨ)

1972年早稲田大学政経学部卒。三菱商事入社。アルミ9年、航空機材6年、香港駐在6年、鉛錫亜鉛・貴金属。プラチナでは世界のトップディーラー。商品ファンドを日本で初めて作った一人。2005年末株式会社フィスコ コモディティーを立ち上げ代表取締役に就任。2010年6月株式会社コモディティー インテリジェンスを設立。代表取締役社長就任。 URL:http://commi.cc/ eメール:kondo@commi.cc